2006-01-01から1年間の記事一覧

「専門性」メモ 4 【1】 【2】 【3】 【5】 【6】

傷は、すでに生きられてしまった引き受けのように成立している。 つねに立ち返ってこざるを得ない、現実的なもの。 「本人の意思を超えてまで」立ち返ってくる。 傷に向けての不可避の回帰と、その場所でなされる事後的な分析労働は、ナルシシズムと踵を接す…

「専門性」メモ 3 【1】 【2】 【4】 【5】 【6】

各人の欲望が、「あるべき専門性の方向」を決めてゆく。 既存の専門性は、ある欲望の枠組み(ルーチン)に従っている。 支援される側の欲望(ニーズ)*1と、支援する側の欲望(なぜ支援するのか)のからまりあい。 相互に、公正さに基づいた再帰的自己検証が…

「専門性」メモ 2 【1】 【3】 【4】 【5】 【6】

「何をすれば仕事をしたことになるのか」への公正な評価が定まっていなければ、「報酬に応じたサービス」へのコンセンサスも定めることができない。 ひきこもり業界の「サービス」は、たとえば心臓外科医が心臓手術をするようには、ミッションが決まっていな…

「専門性」メモ 1 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】

ひきこもり問題においては、「専門家を養成するプログラムがないのだから、私自身も含め、専門家はいないというべき」(斎藤環)。 アイ・メンタルスクールの施設は、行政に認知されていなかった。 事業としての公共的価値を認知されれば、そこに免許・許認…

傷とアファニシス

ひきこもりは、死とトラブルを恐れた状態にある。 外界に関われば、必ずトラブルに巻き込まれるのだから、――というよりも、外界に関わって生き延びるとは、「トラブルをやりくりしてゆくこと」だから、 揉めごとに関わってもあえて自己主張できる強さをもて…

「処理の完遂」と、「終わりなき」の構造

ひきこもりの自意識は、傷口そのもののように膿み続ける。 強迫的な再帰性は際限なく意識の秘肉を痛めつけ、痛みを感じることが現実を感じることに等しい。 傷の再生産以外に、現実を感じられる場所がない。 外界の狂乱に巻き込まれれば、再帰的な確認のタス…

問題への愛

「甘えているだけだから、自衛隊に入れろ」云々の粗暴なひきこもり論について、 かつて斎藤環氏が、講演会でこう語っていた(大意)。 ひきこもりというのは愛の話なんだから、(この問題に)愛のない人は放っといてほしい。 心から同意する。 じつはひきこ…

愛(転移)と自由

いただいたブクマコメントより。 id:Arisan 愛は、享楽が現象に絡め取られることを防止するのだと思う。 私はかつて、ある人に夢中になったとき、膨大な言葉を贈った。 それは、これ以上ないほどの自由の経験だった。 転移を失うことは、自由を失うことを意…

雑誌『ビッグイシュー』 第61号 発売中

斎藤環さんと私の往復書簡 「和樹と環のひきこもり社会論」、今号は私で、『洗脳拒否を共有すること』です。 ▼以下、その原稿より。 症状というなら、懐疑をやめられないのが症状です。 本屋さんでは売っておらず、すべて立ち売りです。 販売場所はこちら。 …

倫理的衝動としての欲動

『為すところを知らざればなり』p.456-8より。 繰り返し立ち返っている文章。 しかしながら、ヒステリー的欲望、強迫神経症的要求、倒錯的享楽というこれら三つの倫理と並んで、第四の倫理的態度、欲動 drive の態度が存在する。 欲動に関するラカンのテーゼ…

「欲動」 Trieb (独) drive (英) pulsion (仏)

『精神分析事典』 p.505 欲動という概念を扱う際に出会う第一の困難は、心理学化の誘惑、すなわちたとえば欲動を本能と同じものと考え、人間に残る動物的なものに欲動の名を与えてよしとするような早計な理解への誘惑に抗することにある。 英語への場合と同…

メモいくつか

再帰性すら、事後性を逃れることはできない。 事前的万端さを目指す再帰性のループに、「事後的分析」という時間軸を入れる。 遡及的分析は、忘我の公共的営み。 これは、症候的な痛みへの同一化を図る、主意主義といえる。 主知主義は、痛みも事後性も根絶…

「終わりなき再帰性」から、終わりなき「事後的な分析」へ

ひきこもりとは、再帰的検証に生命エネルギーのすべてを吸い取られたような状態。 生身の人間には、失態を絶滅することはできない。 意識の努力を、事前的な整備から、事後的な検証に置き換えてゆくこと。 「そうするほかない」という理解の共有が必要。 誠…

必要な概念について(引用のおことわり)

このブログでは、「ひきこもり」についてずっと考えてきたのですが、 ここ数ヶ月で、「終わりなき再帰性から、事後的な分析へ」という枠組みが形になってきました。 そこで、社会学・精神分析・現代思想などから、どうしても参照しておきたい諸概念について…

フロイト 「反復強迫」 Wiederholungszwang (独)  repetition automatism (英)  automatisme répétition (仏)

「快感原則の彼岸」(1920)より。 『フロイト著作集 6 自我論・不安本能論』 p.159 神経症患者の精神分析的治療のあいだに現れるこの「反復強迫」をよく理解するためには、まず第一に、抵抗を克服する際には「無意識」の抵抗とたたかわねばならないという誤…

「死の欲動」 Todestrieb(独) death instinct(英) pulsion de mort(仏)

『面白いほどよくわかるフロイトの精神分析―思想界の巨人が遺した20世紀最大の「難解な理論」がスラスラ頭に入る (学校で教えない教科書)』 p.241‐2、立木康介氏の記述より 「死の欲動」の概念は、フロイトによって、かつての「性欲動」と同じやり方で探求さ…

フロイト「文化への不満」(1930)

『フロイト著作集 3 文化・芸術論』 p.482-3 そしてこの段階になってようやく、まったく精神分析的で、われわれの通常の思考にとっては思いもよらないような考え方が登場する。 この考え方に立ってはじめてわれわれは、われわれがいま論じている問題がなぜこ…

「超自我」 Über-Ich(独) superego(英) surmoi(仏)

『精神分析事典』 p.317 われわれの心的人格の審級で、その役割は自我を裁くことである。 超自我という述語は、1923年、フロイトにより『自我とエス』*1の中で導入された。 超自我は第二局所論の主要な刷新点であった。 『続精神分析入門』(1933)において…

絶対的貧困

『マルクス資本論草稿集〈1〉1857-58年の経済学草稿 (1981年)』 pp.353-355*1、強調は引用者。 所有の労働からの分離は、資本と労働とのこの交換の必然的法則として現れる。 非資本そのものとして措定された労働は次のようなものである。 (1)対象化されて…

『資本論 (3) (国民文庫 (25))』 労働と所有の分離

第21章 「単純再生産」 ドイツ語原文:「Einfache Reproduktion」 貨幣を資本に転化させるためには、商品生産と商品流通とが存在するだけでは足りなかった。 まず第一に、一方には価値または貨幣の所持者、他方には価値を創造する実体の所持者が、一方には生…

使用価値としての労働力

『マルクス資本論草稿集〈1〉1857-58年の経済学草稿 (1981年)』 pp.314-315 交換価値は、一つの生産物のうちに物質化されており、そしてこの生産物はそのものとして他人のための使用価値をもち、またそのものとして他人の欲求の対象であった。 ところが労働…

マルクス 「労働過程」 Arbeitsprozeß (独) labor process (英)

『資本論 (1) (国民文庫 (25))』 第五章 第1節 (以下、強調は引用者) ドイツ語原文:「Arbeitsprozeß und Verwertungsprozeß」 労働力の使用は労働そのものである。 Der Gebrauch der Arbeitskraft ist die Arbeit selbst. 労働力の買い手は、労働力の売り…

超越性――「タダ働きの労働過程」

ジャン・ウリの発言より。*1 私が言う超越性とは、もの自体とか、そんなことには関係しないよ。 それは、ただ働きの持っている性格なのだよ。 役割にこだわらないための役割の分析など、ただ働きにしかすぎないだろう。 だれもそんなことに金をはらってくれ…

「享楽」 jouissance (仏)  Geniessen, Befriedigung (独)  enjoyment (英)

『精神分析事典』 p.87-8 欲望し話す主体が、欲望された対象の使用によって到達し感じる満足とのさまざまな関係。 欲望する主体が話すこと、ラカンが言うように主体が話す存在であること、つまり言存在(être-de-parole)*1であるということは、対象との関係…

内戦――分析プロセスの共有

『面白いほどよくわかるフロイトの精神分析―思想界の巨人が遺した20世紀最大の「難解な理論」がスラスラ頭に入る (学校で教えない教科書)』 p.146 フロイトが残した言葉に、次のようなものがあります。 「精神分析による治療は、国外からの同盟軍の力を借り…

「自由連想法」 free association method

『精神分析事典』p.184-5 精神分析技法を構成する方法で、患者は、治療の間、心に浮かんできたことをまったく区別することなくすべて表出しなければならない。 自由連想法は、1892年に、フロイトがある治療のさなかに暗示をえたもので、その治療中、彼の患者…

「症状」 symptom, sinthome (ラカン)

『精神分析事典』p.194 ラカンは象徴界と想像界に対して特別の関係にある現実界に関心を示し、症状は、医者そして医学的知にとって通常機能しているような意味での、器官的機能不全の徴候に限られるわけではないと指摘している。 「症状は現実界から来る。そ…

「失錯行為」 bungled action (精神分析)

『精神分析事典』p.167-8 失錯行為は主体の意に反して、主体が考えて目指した計画や、意図の代わりにしてしまうもので、まったく思いがけない行為や、振る舞いである。 失錯行為の精神分析理論によって、心的生活のこれらの「偶然のできごと」についてしばし…

「社会的行為」 social action (社会学)

http://www.histanth.tsukuba.ac.jp/~minzoku/pub/12/y12maeyama.html 社会的行為 social action の概念は M.ウェーバーおよびT.パーソンズらによって緻密に吟味され、これまで社会学や社会人類学上の理論構築をリードするうえで大きな役割を果たしてき…