2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「公共精神」の、反復強迫的な性格

公共精神は、「反復するアリバイ」ではなく、「反復する分析」*1として再帰する。 本当に重要な素材は、そのたびに抑圧される。 分析労働は、「抑圧されたメタ理解」を目指す。 抑圧されたメタ理解の剔抉と形成が、しんどい労働になる。 トラブルは、メタ理…

べき論と自己分析 【参照:「自己分析という危険な賭け」】

自分のしんどさに固執することは、そこから公的な問題を立ち上げる分析労働の萌芽であり得る。 個別事例は、むしろ無私的に容赦なく素材とされる*1。 逆に、自分のことを滅却しているように見えて、「自分は公的なことに取り組んでいるんだ」というナルシシ…

厳しさのスタイル

情報のフローとしてのひきこもりなのか、 問いのストックとしてのひきこもりなのか。 答えを共有する厳しさなのか、 問いを共有する厳しさなのか。 再帰性への態度の取り方が、思想の分水嶺になる。 ひきこもり支援をめぐる立場の違い*1は、ほぼここに集約で…

「何も考えるな、とにかく順応しろ」

答えのわかりやすさを生きる(動物化)のか、 問いの強度を生きるのか。 既存のひきこもり支援――再帰性の忘却(or抑圧)を求めている*1。 上山――再帰性の共有によって、かえって再帰性が緩和される、というパラドックス。 再帰性は、それを緩和しようと努力…

政策対象としての「動機づけ」

『現代思想』 2006年12月号 「特集=自立を強いられる社会」 樋口明彦 「若者の「自立」を解体する 〜多元的な社会的包摂の試み」 p.133 いまや、日本において動機づけは突出した政策対象として機能し始め、射程の広い問題となりつつある。 若者を動機づけよ…

「理論は要らない」という言い分の恣意性

その意見自体が理論として提出されている。 「どこまでの理論なら要るか」の水準決めは恣意的。 これはそのまま、「再帰性は要らない」の議論に重なる。 再帰性も理論も、「要らない」のではなくて、「常に生きられている」。 リアルタイムの終わりなき検証…

「孤立」・・・?

強迫的な再帰性が「ひきうけ」を不可能にする。 絶望的に孤立する。 完全に孤立しては、「ひきうける」ことはできない。 【「利用する/される」ことはできても】 どのようなロジックで、再度「共有」を目指すか。 【再帰性緩和の模索】 扶養されているのだ…

再帰性と事後性――体験共有のロジック

体験共有をどういうロジックで追求するかに、その人の思想が表現される。 《問い》は、「ひきうける」ことの萌芽。 「ひきうける」とは、ほとんど無理かもしれない賭けの追求。 ひきうけても、孤立するかもしれない。 「考える」とは、ひきうけ労働の遂行=…

失態

他者と交流を持てば、必ず失態と誤解にまみれる。 そのことに強迫的な恐怖を感じれば、ひきこもるしかなくなる。 すると、ひきこもること自体が失態になる。 失態を抹消しようとすると、自分を消すしかなくなる。 しかし消えること(自殺)は、それ自体が失…

ここ数日の記録

外出やイベントが続きました。 11月17日 ある溜り場スペースのスタッフミーティングに参加。 11月18日 京都文教大学「不登校とひきこもり研究会」(高石浩一教授)のご主催で、親子相談会にお邪魔し、『「治療」から交渉関係へ』と題して講演。 【チラシ(PD…

「専門性」メモ 6 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】

みずからの専門性やその手続きについて、再帰的な検証をつねに再生産できること。 その検証において、常にツボを押さえることができること。 再帰的自己検証のリアルタイムの実演・共有としての、「臨床性」。 ▼「治す」ことを是とするのみの一方的な、みず…

「専門性」メモ 5 【1】 【2】 【3】 【4】 【6】

既存の制度的専門資格(医師・学者・臨床心理士など)を養成するプログラムにおいて、どのような「専門教育」が為されているのかを、本当にクリティカルなニーズとの関係において検証するべき。 それぞれの専門性を問い直すと同時に、その専門的役職にしかで…

「専門性」メモ 4 【1】 【2】 【3】 【5】 【6】

傷は、すでに生きられてしまった引き受けのように成立している。 つねに立ち返ってこざるを得ない、現実的なもの。 「本人の意思を超えてまで」立ち返ってくる。 傷に向けての不可避の回帰と、その場所でなされる事後的な分析労働は、ナルシシズムと踵を接す…

「専門性」メモ 3 【1】 【2】 【4】 【5】 【6】

各人の欲望が、「あるべき専門性の方向」を決めてゆく。 既存の専門性は、ある欲望の枠組み(ルーチン)に従っている。 支援される側の欲望(ニーズ)*1と、支援する側の欲望(なぜ支援するのか)のからまりあい。 相互に、公正さに基づいた再帰的自己検証が…

「専門性」メモ 2 【1】 【3】 【4】 【5】 【6】

「何をすれば仕事をしたことになるのか」への公正な評価が定まっていなければ、「報酬に応じたサービス」へのコンセンサスも定めることができない。 ひきこもり業界の「サービス」は、たとえば心臓外科医が心臓手術をするようには、ミッションが決まっていな…

「専門性」メモ 1 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】

ひきこもり問題においては、「専門家を養成するプログラムがないのだから、私自身も含め、専門家はいないというべき」(斎藤環)。 アイ・メンタルスクールの施設は、行政に認知されていなかった。 事業としての公共的価値を認知されれば、そこに免許・許認…

傷とアファニシス

ひきこもりは、死とトラブルを恐れた状態にある。 外界に関われば、必ずトラブルに巻き込まれるのだから、――というよりも、外界に関わって生き延びるとは、「トラブルをやりくりしてゆくこと」だから、 揉めごとに関わってもあえて自己主張できる強さをもて…

「処理の完遂」と、「終わりなき」の構造

ひきこもりの自意識は、傷口そのもののように膿み続ける。 強迫的な再帰性は際限なく意識の秘肉を痛めつけ、痛みを感じることが現実を感じることに等しい。 傷の再生産以外に、現実を感じられる場所がない。 外界の狂乱に巻き込まれれば、再帰的な確認のタス…

問題への愛

「甘えているだけだから、自衛隊に入れろ」云々の粗暴なひきこもり論について、 かつて斎藤環氏が、講演会でこう語っていた(大意)。 ひきこもりというのは愛の話なんだから、(この問題に)愛のない人は放っといてほしい。 心から同意する。 じつはひきこ…

愛(転移)と自由

いただいたブクマコメントより。 id:Arisan 愛は、享楽が現象に絡め取られることを防止するのだと思う。 私はかつて、ある人に夢中になったとき、膨大な言葉を贈った。 それは、これ以上ないほどの自由の経験だった。 転移を失うことは、自由を失うことを意…

雑誌『ビッグイシュー』 第61号 発売中

斎藤環さんと私の往復書簡 「和樹と環のひきこもり社会論」、今号は私で、『洗脳拒否を共有すること』です。 ▼以下、その原稿より。 症状というなら、懐疑をやめられないのが症状です。 本屋さんでは売っておらず、すべて立ち売りです。 販売場所はこちら。 …

倫理的衝動としての欲動

『為すところを知らざればなり』p.456-8より。 繰り返し立ち返っている文章。 しかしながら、ヒステリー的欲望、強迫神経症的要求、倒錯的享楽というこれら三つの倫理と並んで、第四の倫理的態度、欲動 drive の態度が存在する。 欲動に関するラカンのテーゼ…

「欲動」 Trieb (独) drive (英) pulsion (仏)

『精神分析事典』 p.505 欲動という概念を扱う際に出会う第一の困難は、心理学化の誘惑、すなわちたとえば欲動を本能と同じものと考え、人間に残る動物的なものに欲動の名を与えてよしとするような早計な理解への誘惑に抗することにある。 英語への場合と同…

メモいくつか

再帰性すら、事後性を逃れることはできない。 事前的万端さを目指す再帰性のループに、「事後的分析」という時間軸を入れる。 遡及的分析は、忘我の公共的営み。 これは、症候的な痛みへの同一化を図る、主意主義といえる。 主知主義は、痛みも事後性も根絶…

「終わりなき再帰性」から、終わりなき「事後的な分析」へ

ひきこもりとは、再帰的検証に生命エネルギーのすべてを吸い取られたような状態。 生身の人間には、失態を絶滅することはできない。 意識の努力を、事前的な整備から、事後的な検証に置き換えてゆくこと。 「そうするほかない」という理解の共有が必要。 誠…

必要な概念について(引用のおことわり)

このブログでは、「ひきこもり」についてずっと考えてきたのですが、 ここ数ヶ月で、「終わりなき再帰性から、事後的な分析へ」という枠組みが形になってきました。 そこで、社会学・精神分析・現代思想などから、どうしても参照しておきたい諸概念について…

フロイト 「反復強迫」 Wiederholungszwang (独)  repetition automatism (英)  automatisme répétition (仏)

「快感原則の彼岸」(1920)より。 『フロイト著作集 6 自我論・不安本能論』 p.159 神経症患者の精神分析的治療のあいだに現れるこの「反復強迫」をよく理解するためには、まず第一に、抵抗を克服する際には「無意識」の抵抗とたたかわねばならないという誤…

「死の欲動」 Todestrieb(独) death instinct(英) pulsion de mort(仏)

『面白いほどよくわかるフロイトの精神分析―思想界の巨人が遺した20世紀最大の「難解な理論」がスラスラ頭に入る (学校で教えない教科書)』 p.241‐2、立木康介氏の記述より 「死の欲動」の概念は、フロイトによって、かつての「性欲動」と同じやり方で探求さ…

フロイト「文化への不満」(1930)

『フロイト著作集 3 文化・芸術論』 p.482-3 そしてこの段階になってようやく、まったく精神分析的で、われわれの通常の思考にとっては思いもよらないような考え方が登場する。 この考え方に立ってはじめてわれわれは、われわれがいま論じている問題がなぜこ…