2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「超自我」 Über-Ich(独) superego(英) surmoi(仏)

『精神分析事典』 p.317 われわれの心的人格の審級で、その役割は自我を裁くことである。 超自我という述語は、1923年、フロイトにより『自我とエス』*1の中で導入された。 超自我は第二局所論の主要な刷新点であった。 『続精神分析入門』(1933)において…

絶対的貧困

『マルクス資本論草稿集〈1〉1857-58年の経済学草稿 (1981年)』 pp.353-355*1、強調は引用者。 所有の労働からの分離は、資本と労働とのこの交換の必然的法則として現れる。 非資本そのものとして措定された労働は次のようなものである。 (1)対象化されて…

『資本論 (3) (国民文庫 (25))』 労働と所有の分離

第21章 「単純再生産」 ドイツ語原文:「Einfache Reproduktion」 貨幣を資本に転化させるためには、商品生産と商品流通とが存在するだけでは足りなかった。 まず第一に、一方には価値または貨幣の所持者、他方には価値を創造する実体の所持者が、一方には生…

使用価値としての労働力

『マルクス資本論草稿集〈1〉1857-58年の経済学草稿 (1981年)』 pp.314-315 交換価値は、一つの生産物のうちに物質化されており、そしてこの生産物はそのものとして他人のための使用価値をもち、またそのものとして他人の欲求の対象であった。 ところが労働…

マルクス 「労働過程」 Arbeitsprozeß (独) labor process (英)

『資本論 (1) (国民文庫 (25))』 第五章 第1節 (以下、強調は引用者) ドイツ語原文:「Arbeitsprozeß und Verwertungsprozeß」 労働力の使用は労働そのものである。 Der Gebrauch der Arbeitskraft ist die Arbeit selbst. 労働力の買い手は、労働力の売り…

超越性――「タダ働きの労働過程」

ジャン・ウリの発言より。*1 私が言う超越性とは、もの自体とか、そんなことには関係しないよ。 それは、ただ働きの持っている性格なのだよ。 役割にこだわらないための役割の分析など、ただ働きにしかすぎないだろう。 だれもそんなことに金をはらってくれ…

「享楽」 jouissance (仏)  Geniessen, Befriedigung (独)  enjoyment (英)

『精神分析事典』 p.87-8 欲望し話す主体が、欲望された対象の使用によって到達し感じる満足とのさまざまな関係。 欲望する主体が話すこと、ラカンが言うように主体が話す存在であること、つまり言存在(être-de-parole)*1であるということは、対象との関係…

内戦――分析プロセスの共有

『面白いほどよくわかるフロイトの精神分析―思想界の巨人が遺した20世紀最大の「難解な理論」がスラスラ頭に入る (学校で教えない教科書)』 p.146 フロイトが残した言葉に、次のようなものがあります。 「精神分析による治療は、国外からの同盟軍の力を借り…

「自由連想法」 free association method

『精神分析事典』p.184-5 精神分析技法を構成する方法で、患者は、治療の間、心に浮かんできたことをまったく区別することなくすべて表出しなければならない。 自由連想法は、1892年に、フロイトがある治療のさなかに暗示をえたもので、その治療中、彼の患者…

「症状」 symptom, sinthome (ラカン)

『精神分析事典』p.194 ラカンは象徴界と想像界に対して特別の関係にある現実界に関心を示し、症状は、医者そして医学的知にとって通常機能しているような意味での、器官的機能不全の徴候に限られるわけではないと指摘している。 「症状は現実界から来る。そ…

「失錯行為」 bungled action (精神分析)

『精神分析事典』p.167-8 失錯行為は主体の意に反して、主体が考えて目指した計画や、意図の代わりにしてしまうもので、まったく思いがけない行為や、振る舞いである。 失錯行為の精神分析理論によって、心的生活のこれらの「偶然のできごと」についてしばし…

「社会的行為」 social action (社会学)

http://www.histanth.tsukuba.ac.jp/~minzoku/pub/12/y12maeyama.html 社会的行為 social action の概念は M.ウェーバーおよびT.パーソンズらによって緻密に吟味され、これまで社会学や社会人類学上の理論構築をリードするうえで大きな役割を果たしてき…

役に立つ説明のリンク集(随時追加)

「ベック, ギデンズ, ラッシュ “再帰的近代化”」(LJUさん) 「制度的再帰性」(安川一氏)

二種類の再帰性と、その二重化(宮台真司)

■「『文庫増補版・サブカルチャー神話解体』 あとがき」 再帰性(reflexivity)概念には、社会学に限定すれば、社会システムに準拠したルーマン的用法と、人格システムに準拠したギデンズ的用法とがある。説明しておこう。 ■ルーマンの用法は、ベイトソン(G…

『バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?』 p.83

宮台真司氏のインタビューにつけられた注より。 段落分けと強調は引用者。 再帰性とは、選択前提(であるがゆえに通常は選択対象にならないもの)が選択対象に繰り込まれた状態。 近代社会では「手つかずの自然」は再帰的である。 文化を前提づける自然とい…

「まともに生きようとするからうまく生きられないのか…」(宮台真司)

■「覚醒回避の没入・がもたらす無意味さへの覚醒・がもたらす覚醒回避の没入・…」という高速振動。 或いは「無意味を覆い隠すための祭り・がもたらす無意味さを覆い隠すための祭り・…」という高速振動。 かかる振動の背後にあるのが「終わりなき再帰性」だ。…

「再帰性」という永久機関への同一化

【2007-06-11追記】: この11月7日のエントリーは、あくまで勉強用の資料として見ていただくほうがいいと考え、ここにあった(私自身の意見を含んだ)メモは、別の場所に移動しました。

「終わりなき再帰性」と、アイロニズム

『日常・共同体・アイロニー 自己決定の本質と限界』 p.275-6 宮台真司氏の発言 未規定なものを前にすると足がすくむというのは、私にいわせれば「幼稚園児の思考」です。 規定可能なものを徹底的に思考しつくした人間は、それゆえにこそ未規定なものに開か…

「ベック・再帰性・再帰的近代化」

id:iDES さんによる引用。 執筆は川野英二氏。 科学はみずからの生みだしたリスクを対象とし、さらにはみずからの存立基盤そのものも間い直すことを迫られる。 自己の生みだしたものに直面し、それに対応せざるをえなくなることをベックは「再帰性(Reflexiv…

再帰性について、酒井泰斗(contractio)氏

http://d.hatena.ne.jp/contractio/20070107/1168107956 「再帰」といえば、まずは数学用語(recursion / recurrence)だし、こういう用法↓のことを思い浮かべますよね: ある対象 x の定義に x 自身を使用することを再帰といい、そのような定義を再帰的定義…

再帰性 reflexivity(英) (ギデンズ、社会学)

『日常・共同体・アイロニー 自己決定の本質と限界』 p.45-6 傍注より アンソニー・ギデンズは「諸個人がみずからの行為に関する情報を、その行為の根拠について検討・評価し直すための材料として活用すること」を「再帰性」と呼び、これの諸個人への浸透を…

「再帰性」という永久機関への同一化

【2007-06-11追記】: 再帰性や事後性に関するこの当時の私の記述は、今から見るとぜんぜん駄目。 あらためて勉強を続けます。 「終わりなき再帰性」は、それだけでは合理的検証の無限ループ(「臆病な発想」)に陥る。 これは、クラッチを失ったエンジンの…

「行為の事後遡及的成立説(の謎)」(酒井泰斗 contractio さん)

どうしてこういうヘンな主張が ある種の──しかも個々にはみな優れた──社会学者たちの間に広く受け入れられ、再生産され続けてきたのだろうか。 (ex. isbn:4326652551、isbn:4326601604)

「事後的な分析」という、決定的な要因

事後性の概念を、「成功者の鏡像的自己確認」、つまりナルシスティックな耽溺(自尊感情の獲得)のことだと理解している人が多い。 「すべて終わった後に、うまく行っている自分に気付いて悦に入る」、つまり「うまく行ったことは事後的にしか理解できない」…

「事後性」 deferred(英) Nachträglichkeit(独) après-coup(仏) 【フロイト】

『精神分析事典』p.164 心的生活の特殊な時間性および因果性の次元について言われるもので、記憶から除かれた印象あるいは痕跡が、完全な意味、完全な効果を発揮するのは、最初の刻印のときより後でしかないという事実をいう。 『知の教科書 フロイト=ラカン…

必要な概念について(引用のおことわり)

このブログでは、「ひきこもり」についてずっと考えてきたのですが、 ここ数ヶ月で、「終わりなき再帰性から、事後的な分析へ」という枠組みが形になってきました。 これを記している今日は11月12日ですが、このブログの11月6日以降に、 どうしても参照して…

《日常》 と 《享楽》

新宮一成『ラカンの精神分析 (講談社現代新書)』 p.302 より引用(強調は引用者)。 精神分析は、自己の起源に触れる欲望に導かれて行なわれるものだ。 その欲望は、人が社会的責任を身につけるまで待ってくれるわけではないのである。 そしてその欲望の導き…

《享楽(jouissance)》――欲望の倫理

「モバイル社会における技術と人間」(『Kawakita on the Web』)、斎藤環氏の発言より。 この幻想に対抗できるものがあるとすればラカン的な倫理がある。 ラカンは「罪があると言い得る唯一のこととは、(中略)、自らの欲望に関して譲歩したことである」と…

「制度 institution」

三脇康生氏の論考「精神医療の再政治化のために」に付された注より引用*1。 「フランス語の institution という語の用法は次の二つに大別できる」と教育学者の岡田敬司は言っている。*2 (1) 子供を教育する行為、家族を設定する結婚の行為、ある集まりやある…

新宮一成『ラカンの精神分析 (講談社現代新書)』 p.301-2

強調は引用者。 ラカンは、パリ・フロイト派設立の年のセミネールで、絶えず精神分析経験に立ち返るべきことを強調している。 新しい会員たちに彼が期待したことは、彼の難解な語りを、知的な道具を用いて読み解いてくれることだけではなかった。 彼と彼らと…