「失錯行為」 bungled action (精神分析)

精神分析事典』p.167-8

 失錯行為は主体の意に反して、主体が考えて目指した計画や、意図の代わりにしてしまうもので、まったく思いがけない行為や、振る舞いである。

 失錯行為の精神分析理論によって、心的生活のこれらの「偶然のできごと」についてしばしば引き合いに出される純粋に器質的な説明や、精神生理学的説明などの試みは一掃されてしまう。 自由連想の手法が、これら「偶然のできごと」の分析に適切に用いられることで、失錯行為はその妥協の構造や欲望の成就の機能について本当の症状そのものであることが確認される。 さらに、このような「偶然のできごと」の生成を支配している無意識のメカニズムの本質を考慮することで、失錯行為の精神分析理論は無意識の機能についての研究と理解の基礎的導入となっている。