2008-01-01から1年間の記事一覧

新刊: 『「ひきこもり」への社会学的アプローチ』 (序)

【参照:(正)】 「ひきこもり」への社会学的アプローチ―メディア・当事者・支援活動作者: 荻野達史,川北稔,工藤宏司,高山龍太郎出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2008/12メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 46回この商品を含むブログ (11件) を見…

映画 『破片のきらめき 〜心の杖として鏡として』

【予告編】 (2008年内の上映情報) 「NHKトップページ」→右上の「福祉」→「福祉ネットワーク」→「2003年4月〜2006年3月の放送記録」→「2005年6月21日: アートが心を癒してくれた 〜映画『心の杖として鏡として』〜」――と辿っていただくと、この映画を取り…

カテゴリー化か、発言機会か

先日は、公共的なひきこもり支援事業のタイトル案について呼びかけをさせていただいたのですが(参照)*1、その後の話し合い等を経て、さらに悩ましい焦点が見えてきたので、あらためて状況を整理してみます。 「全国引きこもりKHJ親の会」は、「ひきこもり…

プロセスの主権化?

《当事者主権》*1という言い方は、いまだ完全に「カテゴリーの主権化」という形を取っている。 「参政権」と同じように、は、静態的カテゴリーとして確保される。 それぞれの弱者カテゴリー*2が、枠を得る。 私の目指していることを強いて言葉にすれば、《分…

親の会に任せるかぎり、「とにかく医療化して、社会保障の対象にしてくれ」という話にしかならない。 自分たちの社会参加の姿勢を考え直すことで社会復帰できる人が出てくるかもしれない、という発想にはならない。 問題に取り組むときの方法論は、すでにど…

《プロセスの中心化》 = 当事者化

親にも学者にも厚労省にも、生きることを内側から引き受ける事情についての方法論が全くない。 いきなり「ひきこもりをなんとかせねば」と始まるか、人生論ですませてしまう。 「いきなり問題を扱う」ことには、問題そのものの領野はあっても、引き受けるプ…

当事者化――象徴的・想像的ではなく、現実的

当事者化の動きこそが軽蔑され、防衛的に排除される。 「この人は、自意識に執着しているにすぎない」という扱いを受ける。 ほとんどすべての人は、ご自分の当事者化を防衛的に排除している。 自分を状況の要因とみなし、分析的に検討することは、とても耐え…

「私のしごと館 “やっぱり売却” 「違約金払っても」厚労・行革相合意」(京都新聞)

巨額な運営赤字が問題となっている職業体験施設「私のしごと館」(京都府精華町、木津川市)について、舛添要一厚生労働相と甘利明行政改革担当相は10日協議し、同館を廃止し土地建物を売却する方針で合意した。与党と調整し政府案として月内に閣議決定し…

全体会議メモ

呂寅仲(ヨ・インジュン)氏からは、「H.S.D.(Hikikomori Spectrum Disorder)」、つまり「連続的ひきこもり症候群」という概念が提唱されました。 発達障害、統合失調症、うつ病、人格障害、強迫性障害、対人恐怖症、社会的ひきこもり――などを、連続的な連…

ひきこもりと軍事訓練

全体会議には、韓国で「외톨이(ウェトリ、ひとりぼっち)」に取り組まれている精神科医・呂寅仲(ヨ・インジュン)氏が参加されていました。 そこで私は会場から、次のような質問をしました。 日本では、「ひきこもり・ニートを自衛隊に入れろ」という声は…

「結果的恩恵」よりも前に、「プロセスへの参加」が必要なのでは。

全体会で、私は次のような質問をしました。 KHJは「親の会」ですが、支援事業を考えるにあたって、ひきこもった本人たちの意見を取り入れる仕組みがありません。いきなり意思表示を求められても、最初は幼稚なことしか言えないと思うし、特権化するべきでは…

ひきこもり支援の法制化・制度化をめぐって

NPO法人「全国引きこもりKHJ親の会」による、広島での全国大会に参加してきました。 今回の大会は、厚生労働省社会・援護局の担当者や、議員の方々もお見えになり、今後のひきこもり支援の法制化・制度化(参照)にとって、重要な集まりだったと思います。 …

「青少年育成施策大綱 見直し案」(NHKニュース、動画あり)

政府は5年前に「青少年育成施策大綱」を策定しましたが、青少年を取り巻く環境の変化を受けて見直しを進め、これまでに新たな大綱の案がまとまりました。 それによりますと、学校や職場になじめず、長期間、自宅に閉じこもる「ひきこもり」の人たちや、いわ…

社会思想と臨床

社会的ひきこもりにおいては、 不正な意識しか持てずにいることと、臨床上の硬直が一致している。 誤った観念への固執だけでなく、権利主張できない弱さや、硬直した正義の標榜が、不正であり得る*1。 「何が正しいのか」のリアルタイムの判断は、とても政治…

『家族─ジェンダーと自由と法』「はしがき」(水野紀子)より: 日本家族法は,親族法も相続法も主としてフランス法を継受している。 (略) ニコラ・マティ「社会生活の契約化─フランス法における家族という実例」はフランスの新進気鋭の民法学者による論文…

関西ローカルのドキュメンタリー番組『映像’08』(毎日放送、4ch) 11月16日(日)の夜24:30〜の放送: 「ひきこもる大人たち」 【追記】: 当ブログでTV番組等の情報を取り上げる場合、必ずしもその取材対象となった支援団体・個人等を推薦しているわけで…

「他者を尊重する」という当たり前の正義に居直ってないで、あなた自身がどういう事情にあるのか、語ってくださいよ。あなたの考え方を、あなたの言葉と人生を素材化して検証することで浮き彫りにできると思いますよ。 なんで「当事者発言」を、弱者や被差別…

メタ的・客観的な語りに対して、ダメな自分語りがあるという支配的な理解。 じっさいそういう両極の生産様式しか見られないし、理解する側が、そういう両極しかあり得ないと思っている。 問われているのは、「どうやって自分はみずからをプロセスとして生き…

(2) ベタな順応主義の暴力と、動態的な反差別

昨日の続きで、やはりメモをまとめてみます。 特権的な身分固定は、政治的に不当というばかりでなく、ひきこもりの場合 “臨床上の” 害悪でもあるというのが私の理解です。 これまでにも「ひきこもり」というネガティブな呼び名が差別や自意識を助長する、と…

(1) 紛争=症候は、社会的論点として受肉する

ここ最近考えていること、議論していたことを、ややまとまってメモしてみます。 努力のスタイルとその社会的編成が、私の努力の主題になっています。 ある問題を扱おうとするときに、そのアプローチの仕方そのものが、「問題」の一部分であることがある。 法…

メタ言説への、解離的な居直り

★雑誌『ビッグイシュー』 第105号 発売中斎藤環さんと私の往復書簡 「和樹と環のひきこもり社会論」 は、今号で最終回です。 最後は私で、『順応状態の完成より、手続きの整備を』。 支援する側もされる側も、完成された順応状態を想定するのはまずい。 政治…

「ひきこもりなど支援で新法へ」(NHKニュース、動画あり)

若者への支援をめぐって、麻生総理大臣は、先月の所信表明演説で、「若者に希望を持ってもらわなくては国の土台が揺らぐ」として、「困っている若者に自立を促し、手を差し伸べるため、新法を検討する」と述べました。これを受けて、政府は、長期間、自宅に…

幼児性への嗜癖的居直りが、状況を分節する労働過程を排除する

ひきこもっている人を、説教で締め上げて「大人にする」というのがパターナリズム。 これを批判する人たちは、「もはや成熟はできない」というが、「自分はすでに正しいポジションにいるんだ」というこのメタ的な態度自身が説教だ。 自己中心的な嘘やナルシ…

労働過程を中心化すること

社会復帰のためのさまざまな事業や提案がなされているが、そこには「成功した状態」から、できない側を否定する発想しかない。 逆に言うと、「うまくいった側」は、すでに自分を反省しなくていいことになっている。 これは、結果物としての「売れた商品」の…

バラバラでベタな「メタへの嗜癖」

努力のプログラム自体をまちがっている。 その方向で勤勉にがんばっても、問題をごまかしているだけ。 「○○をすれば引きこもり問題に取り組んだことになる」の前提を間違っている。ところがこれを言うと理解を拒否する。ひきこもり問題に取り組むより、自分…

「制度を使う」ことのあやうさ

立木康介 「ラカン派の視点から――制度を使った精神療法とラカン派応用精神分析」(『医療環境を変える―「制度を使った精神療法」の実践と思想』pp.347-370掲載) p.349-350 より*1: 「パリ・フロイト学派」、および、1980年の同学派解散のあと、それを継承…

身のまわりに、権威主義者、嘘つき、ナルシストしかいない場合、どうしたらいいのか。 中間集団の問題とはそういうことだ。 「社会復帰」なんて、大文字で綺麗事で語ることじゃない。 「金と権力」を薄汚く語る大人が嫌いだった。 でもあれは、「金と権力が…

ひきこもり――家族の側に、拒絶の権限はないのか

前回は、国が扶養を押し付ける「扶養義務」を調べてみたが、実際にひきこもる人が「扶養しろ」と訴えを起こした事例は見当たらない*1。 基本的には、暗黙の威圧、感情的な暴発、身体的な暴力などによって、なし崩しに扶養が続いてしまう。 よく「親が甘やか…

ひきこもる人への扶養義務は、法律ではどう考えるか(メモ)

なるだけ基本的な本を引用したり、ネット上にわかりやすい説明があったらリンクしたり、という具合でこれからも触れていこうと思います。重要なポイントにはくり返したち帰ると思いますし、理解の誤りや文献のアドバイス等ありましたら、ぜひご指摘ください…

「ドゥルーズ - 左翼とは何か?」(Air du Temps)

リンク先の管理人 chaosmos さんが字幕を入れておられて、ドゥルーズ本人がわかりやすい言葉で語っています。 人権と法解釈の話は強く励まされた。 「左翼は遠方から考えていく」というのだが、 自分の当事者性を徹底して問い詰めるような議論*1では、自分の…