2013-01-01から1年間の記事一覧

そこには、どんな参加ロジックが賭けられているのか

「美術・批評業界への不信」という拙エントリについて、 画家の永瀬恭一氏からレスポンスを頂きました(参照)。 ご多忙のところ、ありがとうございます。*1 斎藤環が選ばれたのは、「通常の読者の外に届ける」「経済的・政治的波及効果が期待されて」だろう…

美術・批評業界への不信

この日本の美術界という《悪い場所》を、閉じた円環を開放するロジックは、マーケットの論理しかない 岡崎乾二郎氏との対談で、こう語っていたのが斎藤環氏でした(参照)。 その斎藤氏が、『四谷アート・ステュディウム』閉校問題で、 しれっと寄稿していま…

練習と稽古

先日のエントリのことでお話をご一緒していたら、 精神科医・美術批評家の三脇康生氏より 試合より、練習のほうが重要 というアイデアを頂いて、そこからずっと考えています。 練習というのは、非常にふしぎな概念です。 たんなる精神でも、たんなる身体でも…

「稽古」及び「練習」の語誌的研究(南谷直利、北野与一)

日本語ネイティブのかたは、「稽古」と「練習」という言葉は、いつの間にかそれとなく、使い分けていますよね。しかし違いを説明しろと言われると、よく分からない。そこで以下の論文を読んでみました。 http://www.hokuriku-u.ac.jp/jimu/kiyo/kiyo26/hou1.…

批評が臨床であり、責任を問われていることを真に受けるために

行ってきました。大阪です: ★『むかしMattoの町があった』自主上映会 特別企画(参照) イタリア精神保健改革をもっと深く知りたい! 理念的な目標については、映画を観てペッペ・デッラックア氏の講演を聴きに来た時点で、あるていど共有されていると思う…

ハイデガーが、日記で『歎異抄』を激賞…?

「歎異抄」でネット検索すると、↓この動画が出てきます。 もし10年前にこんなすばらしい聖者­が東洋にあったことを知ったら、自分はギリシャ・ラテン語も勉強しなかった。日本語を­学び、聖者の話を聞いて、世界中に広めることを生きがいにしたであろう。 こ…

《引きこもりの44歳長男殺害、父親「息子に頼まれた」》(TBS系、動画あり)

広島県福山市で2日午後3時ごろ、70歳の男が「息子を殺した」と、妻に付き添われ、警察署に自首してきました。警察は自宅で供述通りに長男(44)の遺体を発見。〔…〕 近所の人や警察によりますと、岡本容疑者と妻は10年ほど前に長男と別居。およそ3…

自分の現実をやり直すために――立木康介の症候論

露出せよ、と現代文明は言う: 「心の闇」の喪失と精神分析作者: 立木康介出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/11/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 著者は、さまざまな作品や社会現象が 以下の【1】にあることを危惧し、【2】を…

嗜癖、個体化、党派性

【追記的に承前】 動きすぎてはいけない: ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学作者: 千葉雅也出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/10/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (31件) を見る 《切断-連続》の問題圏で必須なのは、以下の二つのモチーフ…

身動きが取れません―― 千葉雅也のドゥルーズ論

動きすぎてはいけない: ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学作者: 千葉雅也出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/10/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (31件) を見る 動かないものを、動かそうとすること。 あるいは動きすぎるものを、止めてみる…

映画『むかしMattoの町があった』

http://180matto.jp/ 明石で鑑賞。*1 精神科病院がテーマなので、一般受けはしにくそうですが、イタリアで二回に分けて放映されたときの視聴率は、21%を越えたとのこと。 フランコ・バザーリア(Franco Basaglia)という、精神科病院「廃絶」運動の中心人物…

「批評の禁止」という露骨な差別

アウトサイダー・アートの世界―東と西のアール・ブリュット作者: はたよしこ出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2008/01/31メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 138回この商品を含むブログ (27件) を見る斎藤環の論考より(p.166): アール・ブリュット…

「差別は構造の問題である」――環境設計と、名詞の問題

「差別が構造の問題であることのわかりやすい例示」 小山エミ(Macska)氏の差別論について、野間易通〔のま・やすみち〕氏が説明しておられます。ずっと説得的な話が続くのですが、最後でとつぜん飛躍している: 「レイシスト差別」「ネトウヨ差別」はもち…

ドキュメンタリー映画『HIKIKOMORI 〜沈黙を聴く』

試写会情報。 場所はフランスですが、「こんなのあるよ」ということで。*1 【場所】 フランス・レンヌの図書館(参照) 【GoogleMap】 【日時】 11月13日(水) 18:30〜20:00 (作品そのものは50分) 上映後は、映画を撮ったお二人(Dorothée Lorang 氏と …

官僚の顔、やり直しの顔

『現代思想 2013年11月号 特集=ハラスメント社会 セクハラ・パワハラ・アカハラ・マタハラ…』掲載の三脇康生の論考*1で、 顔-タイプ visagéïté-type と 顔-生起 visagéïté-occurrence という、グァタリ(Félix Guattari)の議論が参照されている。 臨床例を…

内部の問題としての暴力

《出口なき教室 〜フランス いじめの被害》(BS世界のドキュメンタリー) 登場した人物が、以下のようなことをつぶやいていた。*1 大人たちは、暴力は《外部から》来るものと思いたがった。つまり暴力は、外部から身を守る意味での《治安》の問題だと。しか…

「孤立無業」についてのメモ

玄田有史 《孤立無業者(SNEP)の現状と課題》(PDF、2013年1月) 論文を引用しながら、概念の位置づけや数字などを確認しておく。*1 孤立無業者〔Solitary Non-Employed Persons: SNEP(スネップ)〕とは 「20歳以上59歳以下の在学中を除く未婚無業のうち、 …

イベント告知: 「とんだエコノミック」

11月9日、高橋淳敏さん(ニュースタート事務局関西代表)や、 金城隆一さん(コミュッと!NPO法人ちゅらゆい代表)とご一緒して、 お世話になる予定です。よろしくお願いします。 ★「とんだエコノミック」(『ニュースタート事務局関西』15周年祭) 日時: …

「職歴のない40歳以上」が、焦点になりつつある

■《1000人に3人ひきこもり 15〜39歳 山形県が初調査》(産経ニュース) 社会的支援の必要性が指摘されている15〜39歳に限ると855人で、1千人のうち3人の割合になるという。 ■《ひきこもり「40代以上半数」》(NHK、山形県) 当初、県は…

あるミーティングで、次のようなことを確認した。 (1)不登校や引きこもりについては、最低でもこの25年*1について記憶喪失になった取り組みや議論は、話にならない。 (2)臨床/労働/つながり/芸術――こうしたテーマは、そもそも同時にしか扱えない。分けて…

制度化の受動的時間を肉的にあつかう

廣瀬浩司氏のツイートより: 制度への参入や更新は、つねにパラドキシカルな飛躍を孕み、その飛躍が回顧的に既成の制度と結合することを前提とする。しかしその飛躍は最終的には言説としてしか現れないのか。だとしたら、制度の用語にとどまるのでは不十分な…

紛争を書き換えることはできるか

私は先日、三脇康生氏と山森裕毅氏の署名入り論考 解題 ラ・ボルド病院における「管理」について問いを開く*1 について、大意 次のような指摘を行いました(参照)。 私は永らく三脇氏のラボルド論を読んできたが、今回の解題は、氏の論考の核心部分を知らな…

硬直した「当事者尊重」は、理論による疎外の強化にすぎない

拙エントリについて(参照)、解題者のお一人である山森裕毅氏から、 反論を含むレスポンスを頂きました。 《ご批判ありがとうございます》(ブログ『屈折率』) しかし残念ながら…、 解題に現れていたフレームをそのまま反復するようなご発言で、 私の疑念…

解説者の体現する《制度》

現代思想 2013年8月号 特集=看護のチカラ “未来"にかかわるケアのかたち作者: 西村ユミ,木村敏,鷲田清一,広瀬寛子,村上靖彦,J・ウリ,信田さよ子出版社/メーカー: 青土社発売日: 2013/07/27メディア: ムックこの商品を含むブログ (6件) を見る pp.217-229 ジ…

モノの鮮度なのか、作業プロセスの鮮度なのか

togetter 《カフェ・ベローチェで「鮮度」を理由とした雇い止め》 いわゆる若者支援にも、《鮮度》という発想があります。 ある引きこもり関連のイベントで 「若者を受け止めてください」 「ずっと引きこもってもいいじゃないですか」 と講演した大学教授は…

条件を理解した瞬間に、変化は起こっている

ミシェル・フーコー―批判的実証主義と主体性の哲学作者: 手塚博出版社/メーカー: 東信堂発売日: 2011/12メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログを見る 解説書はそれなりに読むものの、フーコー本人の解読には挫折しているような(私みたいな)…

分析事業そのものが、場所の一部分であること

菅原道哉氏(精神科医)の発言より:*1 人と人の関係性は要素に分解すれば各個人が一つの球のように存在しています。しかし境界の固定した球ではありません。〔…〕 さらにはそれぞれの球が動いている場があります。しかもこの場も平面であり続けることはあり…

「複数性」の単なる指摘から、その都度のやり直しへ

東浩紀氏について、田口卓臣氏のツイートより: ● ● 処女作で取り組もうとしていた「複数の超越論性」はとても重要だと僕は思っていて、この論点はまさにあの著作以降、スッと後景にしりぞいてしまいました。形式主義的に論じてしまうと、まさにニヒリズムに…

明日です: 公開シンポジウム「ひきこもりの現在・過去・未来」

【日時】: 2013年 7月13日(土) 13 時30分〜18時 【場所】: 京都大学 人文科学研究所 1F セミナー室 1 私のほかにパネリストが3人おられますし、 議題がどう転ぶかは分からないのですが、 自分にいただいた発表時間の30分では、 (1)不登校・ひきこもり…

アリバイへの帰属とは別の〈共〉

現代思想 2013年7月号 特集=ネグリ+ハート 〈帝国〉・マルチチュード・コモンウェルス作者: A・ネグリ,M・ハート,D・ハーヴェイ,上野千鶴子,市田良彦,岡田温司,藤原辰史出版社/メーカー: 青土社発売日: 2013/06/27メディア: ムックこの商品を含むブログ (7件…