時間そのものは古くなることができない。

「古くなる」は時間の経過を意味するが、その時間という特質そのものは劣化しない。5億年前も今も5億年後も、完全に同じ《時間》が生きられる。時間と結びついた空間は、つねに絶対的鮮度に満ちている。私たちが《現実》として仕方なく受け入れているのは、…

「当事者のために」をメタな口実にする全体主義がエビデンスを軽視する

私にとって倫理とは、フェアな形での自己の素材化のことだ。そこでおのずと生じてくる創発的分析の特異性、そのできる限りの尊重*1をこそ倫理的な営みと呼びたいのだがいわゆる左翼リベラルにとっては、「当事者のために」というような絶対擁護を口実にする…

「当事者」という役割への監禁ではなく、共事者研究というスタンスへ

★藤谷 悠(フジタニ ヒロキ)【「ひきこもり学」を構想する 二人のひきこもり経験者の対話――当事者研究から共事者研究へ】(『日本オーラル・ヒストリー研究』第16号、2020年12月、PDF直リンク) 関連して語りたいことが山ほどあって、細かい文脈や背景まで説明しない…

【「ひきこもり」の30年を振り返る (岩波ブックレット1081)】読了

「ひきこもり」の30年を振り返る (岩波ブックレット 1081)作者:石川 良子,林 恭子,斎藤 環岩波書店Amazon 著者のお三方と私は、以前には何度も面会ややり取りがありました。*1私としては2008年の『ビッグイシュー』での一件がどう扱われているかを知りたかっ…

《弱者性=マイノリティ性=被害者性》の、物神化=資本化

《弱者性》という資本を、 「私はその弱者を代表している」という代表権の詐称 その弱者問題の解釈権の恣意的独占 で独り占めしようとするのが活動家。彼らは弱者性という価値の独占資本を目指す。*1ひとりひとりの《弱者》よりも、弱者価値の代表権と解釈権…

主体化の困難の核心にあるテーマ

論理関係を考えるときには時間を無視している。論理的に考えるといっても論理を瞬時に操ることはできないから、なにがしかの時間を食う。「見比べる」などという簡単な動作ですら、なにがしかの時間を必要とする。まして、時間と共にどんどん変化するものを…

ツイートできなくなった【追記アリ、すでに復旧ずみ】

ツイート: 1日あたり2,400件が上限です。1日あたりのツイート数のリミットは、さらに30分単位のリミットに分けられています。リツイートもツイートとしてカウントされます。(Twitterリミットについて理解する | Twitterヘルプ) 1日あたり2,400件なら1時間…

この世への加担

▼《当事者》概念には主体化の困難と「政治の都合」が詰まっているので、解体構築で妥当な形でやり直すにはまだ数百年かかる。▼私はもはや、暴力に加担するか、一方的に使い捨てにされる形*1でしか社会化されない――そう思い始めるとまずい*2。労働では、生活…

当事者うんぬんの話では、《被害/加害》だけでなく、《功績/加担責任》の軸が要る。

今は当事者といえば被害者ポジションの奪い合いばかりで、誰も「当事者としての責任」を取ろうとしない。しかし日本語の "当事者" には「加担責任」の意味もあるはずだ。*1《被害/加害》だけでは、「この人が引き受けた」の評価軸がない。しかし当事者的で…

《当事者性の分析》こそ、徹底的に忌避されている。

自分の加担責任をつまびらかにされる恐怖。 それを回避するためにこそ「弱者を守るため」を口実にする。それを話題にしてる間は「私の加担責任」を問われずに済む(≒問うてはならない)という暗黙の恫喝が機能するから。 私が《技法》というテーマを核心にす…

当事者概念依存症

いわば、《当事者概念依存症》とでも呼ぶべきもの。適度に使われる限りはそれなりに有用な《当事者》概念だがそのあまりに強い刺激と "卑劣な有用さ" で使用をやめられなくなり、自分の都合が悪そうな場面では必ず頼ってしまう――それどころか、つねに連続的…

形式的禁止と、作家的な試行錯誤

とてもじゃないが引き受けられない現実の生をそれでも引き受けようとする、その特異的な誠実さが文学や哲学だから、作家がポリコレを口実にするのは最悪の欺瞞であり、幼稚。定型的な点数稼ぎ*1は言葉の誠実さではない、むしろ逆。いっぽうで、形式的禁止は…

難しいがこのあたりでやるしかない

www.nhk.jp観ながら考えてたのは、自分としては《技法》という考え方を人類史的に位置づける努力をするしかないんじゃないか、ということ。ひきこもり状態やアルコール依存への取り組みなどからどうしても必要になって私が析出したのは、《技法》という考え…

《当事者・運動体・アカデミズム》と解釈権の独占

「当事者」という概念のまわりを考えるうえで大事な点に触れた、雁琳氏の論稿。note.com いくつか引用してみる(強調は引用者)。 具体的にどのような中傷と差別的発言であったかについては聊(いささ)かも検討されていない 所謂(いわゆる)〈弱者男性論〉…

家族を人質に取っている中国共産党

www.nhk.jp 見逃し配信:12/26(日) 午後10:09 まで 中国共産党が、国外にいる「中国人」の家族を人質に取ってスパイ活動を要求していることがNHKで映像付きで報じられた。これでもう「ウワサ」ではなくなった。ここでウイグル族がされていることは、将来の日…

排除の担い手による対話のススメ

心を病んだらいけないの?―うつ病社会の処方箋―(新潮選書)作者:斎藤環,與那覇潤新潮社Amazon 斎藤環氏の新刊本を通読したのはもう10年ぶり以上になると思いますが、呆れてます。本書で説かれる役割固定云々は、彼が私を排斥することになった往復書簡で私が…

NHK「がんになった緩和ケア医」視聴

www.nhk.or.jp癌患者の終末期医療で緩和ケア医としてクリニックを開院した母(71歳)と、医師になってその志をつなぐ息子(45歳)。母親から院長職を継いだ翌年(2019年秋)、その息子さんに大きな肺がんと脳への転移が発覚し、余命2年と告げられた。NHKのス…

"Theory is physical":理論的理解は、時間的に展開される。

理論的理解には、記号という物理的な支えが必要。ということは、理論はこの物理的な支えの限界を超えては成立できない。「information is physical」というランダウアーの指摘は、理論そのものについても言える。つまり "Theory is physical"。理論的理解は…

真理は必ず無時間的であると勘違いした認識を、時間的な活動で位置づけなおす必要

時間についての考究そのものが無時間的認識を目指している奇妙さ。 私たちは、時間との関係において学問や主張が客体レベルにあることを忘れている。どんな学問も、時間的な条件付けの中でしかおのれを実現できない。学問的理解は、それ自体が認識の労働過程…

「時間を捨象した概念操作」と、「ナマの時間を生きる概念操作」

ようやく大事な点を整理できたと思うので、記しておく。私たちは、 (1)時間を捨象しておこなう概念操作 (2)ナマの時間を生きる概念操作 この2つを混同したまま混乱してる。たとえば数式や論理を扱うとき、私たちは時間を捨象してる。数学的な概念操作を…

「時間は自己を自己に関係づける否定性に等しい」

『経済学・哲学草稿 (岩波文庫 白 124-2)』p.223 より: したがって抽象的な思想家にとっては、自然全体は論理学的な諸抽象をただ感性的で外的な形式のなかで繰り返しているものにすぎない。彼は自然やこれらの〔論理学的な〕抽象をふたたび分析する。したが…

無時間的真実は、時間的にしか実現できない

時間の要因を捨象した関係式は、時間的に(労働過程として)実現せねばならない。ここを忘れた概念操作が支配的になっている。数学的真実は、言語を時間的に再生産しなければ実現しない。 つまり無時間的な関係式は、時間的にしか実現しない。「論じる自分は…

ETV特集「ドキュメント 精神科病院×新型コロナ」

www.nhk.jp 再放送 8月5日(木) 午前0:00 【見逃し配信】(配信期限:8月7日(土) 午後11:59 まで) 精神科病院への長期取材を通じて、取材スタッフも「これは単なるきれいごとではどうにもならない」と感じたんじゃないか――わずかなりともそう思わせる編集を…

時空間的ではない「意味内容」が時空間的に表現されるしかないことの工学

10代のころに読んで「いちばん考えたいのはこれだ」と思いながら、どこからどう手を付けてよいのか、何を専門にすればよいのかすら分からず、そのまま30年以上たってしまった文章がこれ。 ミハイル・バフチン『小説の時空間』pp.345-346 より 結びとして、も…

劉慈欣『三体』読了

三体Ⅲ 死神永生 下作者:劉 慈欣早川書房Amazonいまひとつ夢中になれないまま『III 死神永生』下巻の半ばまで来たんだけど、最後の最後に次々出てくるSF的なアイデアが本当に、本当に素晴らしかった。(以下すごいネタバレなので注意)

レポート 『不登校は終わらない』(3)

前回 technique.hateblo.jp ★目次 承前 メモ リンク集(一部) 資料: 『不登校は終わらない』書評: 承前 今回取り上げた諸問題については、今後も継続的に考えてゆきたいと思っています。*1 レポートの最後に、報告者である私の簡単な覚え書きと、リンク集…

レポート 『不登校は終わらない』(2)

前回 technique.hateblo.jp ★目次 承前 「ニーズの主体」と「主張の主体」 運動体のイデオロギーと、「当事者の声」 《存在》 と 《言葉》 「当事者」の主張責任 「弱者の声」と、抗議倫理 既存解釈と、そこからの脱落 「前衛党」と「反革命」? 解釈権の拮…

レポート 『不登校は終わらない』(1)

前回 technique.hateblo.jp ★目次 おことわり 前提 事実確認 要点 調査倫理について 疑問 ≪当事者≫について おことわり 貴戸理恵氏の著作『不登校は終わらない―「選択」の物語から“当事者”の語りへ』について、「見解」を発表した*1東京シューレ、及びそれに…

レポート 『不登校は終わらない』(0)

※【この記事は、2005年5月にエントリした文面をできるだけそのまま再録したものです。「はてなダイアリー」から「はてなブログ」への移転に伴って記法等が変わってしまい、そのままでは記事のまとまりすら保てなくなっていたため、まとめ直しました。デッド…

自分の紛争に向き合うことがカギになる

www.shinchosha.co.jp▼この小説には「廃人」という語が何度も出てくる。つまり8050状況に突入した人は「廃人」であって恐怖の対象であり、登場人物の全員が、ひきこもる青年までが「中高年のひきこもり事例」を見下している。▼人物描写や問題意識に厚みがな…