2010-01-01から1年間の記事一覧

お互いが 《引き出し屋=監禁屋》 になるのではなく

斎藤環氏の引きこもり論は、カフカの「掟の門」から引き出そうとするが(参照)、 門をくぐる前の状態を「ひきこもりシステム」としてメタに描いて終わり、 門をくぐった後の《社会性の帝国》については、単に順応するしかない。 門の前についてもあとについ…

政治的正当性は、臨床上の要請だ。 「努力さえすれば、恐怖症とは別の努力ができる」という公正さを実現するには、努力プロセスそのものに照準した臨床モチーフが要る。 臨床に関して、「何を主題化しなければならないか」という合意形成は、政治的説得にあ…

生産力と生産関係の矛盾より、「規範とディテールの矛盾」が常に生じている。

社会生活を持続させる能力は、犯罪を持続させる能力に近い。 「出来心・キレる・利用される」ではダメ。 周到さ・忍耐・自律が要る。 組織的承認のある犯罪には、誰も手をつけたがらない(黙認される)*1。 別の社会性をもって今の社会性に替えることは、現…

「主観性の構成」 と 「中間集団のアレンジ」

「本人のせい」と「社会のせい」の両極しかない。 こんな発想のままあれこれ論じても、問題のメカニズムに加担したままだ。 本当の問題は、主観性と集団のありかたを同時に考えるところにしかない。――つまり問題は、個人だけでも社会だけでもなく、《関係性…

ひきこもりについて、最も重要な論点

「努力すればするほどおかしくなってしまう」という執拗なメカニズムを、内側から扱える議論がない。 専門性をかこつ既存の議論は、主観性の構成という最も重要な論点を扱う能力がない(気づいてすらいない)。 なぜなら彼らには、自らの構成過程を対象化す…

特異的な専門性

社会的ひきこもりに関連して、既存の「専門家」がダメだとすれば、自分で専門性を作らなければ。 医師・支援者・文筆家としてプロを名乗る人たちの議論に納得できないなら、それに反論するあなたは、プロとして力量を問われる用意ができているか。 ただ観客…

ジャンルを創ることと、そのジャンルで成果を出すことは違う。

物理学と、各理論。 野球と、個人成績。 任侠世界と、組作り。 ジャンルがなければ「仕事をした」ことにならないし、共同体づくりもできない。 ひきこもり問題の場合、何をすれば仕事になるのか分からない状態で、「共同体を作らねばならない」という課題だ…

能力偽装

togetter「紀藤正樹&落合洋司 両弁護士が語る「前田恒彦的なるものの罠」」より: 紀藤正樹: 僕は前田的堕落は、一見仕事がテキパキできて有能だが、実際は真実に迫ることの出来ない、ダメな法律家のタイプの問題だと思います。こんなタイプ昔からいたし今…

主観性と関係性

ニコニコ生放送「東浩紀×宮台真司 『父として考える』」について、東浩紀氏の twitter より: @hazuma: ぼくは単純に、宮台真司さんとぼくはやっぱり生き方やコミュニケーションの捉え方が大きく違うなあ、と素朴に思いました。これは年齢や世代の問題では…

至近距離の公正さ、という臨床課題

「正しい側よりも、弱い側につきたい」――このロジックに徹底的に抑圧されてきたことにようやく気付いた。正しいことを言っても、分析的に発言している時点で、「より強い立場にいるから」責められる。間違っているから責められるのではなく、むしろ「正しい…

分析者=目撃者

関西のある地方にお邪魔してきた。 あの二次会ならではというか、水面下的な問題意識の部分こそ、イベント中に繰り込む工夫が要るかもしれない。 「イベントはよそいきの顔」という声もあったが、その使い分けそれ自体をテーマにしないと、関係を営むために…

臨床活動としての正義(メモ)

中山竜一氏『二十世紀の法思想 (岩波テキストブックス)』より: 「正義」という表現の漢語としての語義は、『広辞苑』によれば「正しいすじみち、人がふみおこなうべき正しい道」という意味で、そもそも荀子の言葉に端を発するものだそうである。そうした漢…

動機づけと言語

パトゾフィー作者: ヴィクトーア・フォン・ヴァイツゼカー,木村敏出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2010/01/26メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (2件) を見る以下、[ ] 内は訳者による説明、〔 〕内はルビを原語に置き換えたもの。 太…

使いみちのない否定性

バタイユは、ヘーゲル的絶対知があり得ない以上、否定性*1には「使いみちがない」と言った。 以下、『有罪者―無神学大全』(pp.250-251)【原文】より: 何はともあれ、私の経てきた心労の多い体験が、とうとう私に、私にはもう何も「する」ことがないと確信…

内部化の病

本屋や図書館での立ち読み時間がいちばん勉強していたことに気づく。 この時間には完璧主義がないから、いくらでも本を読み進められる(参照)。 ⇒ 家にいる時間が「立ち読み」に近づけばよい。 「家の中は過剰に家の中であり、家の外は過剰に家の外」という…

【引用】 自由と狂気

ジャック・ラカンの『エクリ』より: 狂気の危険は、そこにおいて人間が自分の真実と自分の存在をともに賭してなす同一化の牽引力そのものによって測られるからです。したがって、狂気は人間の生体のもろさの偶発的な事実などであるどころか、人間の本質のな…

【引用】 主観性の危機

自明性の喪失―分裂病の現象学作者: W.ブランケンブルク,木村敏,岡本進,島弘嗣出版社/メーカー: みすず書房発売日: 1978/07/11メディア: 単行本 クリック: 39回この商品を含むブログ (13件) を見る 強調は引用者。 自分は《人間として》だめだ、問題が次から…

『統合失調症と宗教:医療心理学とウィトゲンシュタイン』より 狂人は間違つて考へるのではない。寧ろ正しい考へに閉ぢこめられて身動きが出来ないのである。 (引用されていた小林秀雄「金閣燃亡」のことば) 「真の謙虚さとは、ひとつの宗教的問題である」*…

【文献メモ】 ドゥルーズ/グァタリと法

Deleuze & Guattari: Emergent Law (Nomikoi Critical Legal Thinkers)作者: Jamie Murray出版社/メーカー: Routledge-Cavendish発売日: 2013/04/11メディア: ハードカバー クリック: 12回この商品を含むブログ (2件) を見る「Jamie Murray」 http://www.rou…

意識されない党派性と、洗脳忌避のカルト化

『多重人格性障害―その診断と治療』p.446、訳者の一人である中井久夫氏による記述(強調は引用者): 〔翻訳を〕やり終えて、改めて、私の生涯の課題であった分裂病*1患者を思うと、彼らが、自己の解体を賭けてまで、自己の単一統合性を守り抜こうとする悲壮…

主体性論争 メモ

私たちの主観性そのものが、集団的傾向をもった生産過程であり生産物であり、そこでどうアレンジするかを考えなければならない*1、というガタリらの議論を考えていて、日本の主体性論争や党派性論争*2が気になった。 《歴史については、科学としての史的唯物…

身近で生きてしまっている関係実態にこそ、思想と社会が表現されている。

白井聡氏『「物質」の蜂起を目指して――レーニン、〈力〉の思想』p.318 より: フロイトによる「無意識の発見」とレーニンによる「新しいタイプの党」の発案(『何をなすべきか?』)は、ほとんど同時になされた。このことは何を意味するのであろうか。精神分…

生産と承認の様式

ひきこもりにおいては、硬直した自意識やメタ言説の万能感など、ナルシシズムの問題を避けて通れないが*1、それを「自己愛性人格障害」と名指して終わらせるナルシシズムが繰り返される。 論じる自分が、どういう様式を反復しているのかという当事者性を忘れ…

正当性の生産様式

「自分は成功していると主張する商品の詐欺的自己主張」――社会化がそういう形をしている。 意識が生産過程なら、そこには生産様式がある。 意識の努力が、どういう生産様式をしているか。 たとえ単独であっても、また集団に組織されるあり方においても。(生…

《つながりの設計者》が欠けている

NHKあすの日本「無縁社会〜私たちはどう向き合うか」(2010年4月3日放映) 録画分を再視聴。 私たちのすぐ近くにある無縁社会。それをさらに広げると懸念されているのが単身世帯の急増。「単身化」です。国の研究機関の推計よると、1980年に20%にも満…

主体がまとまりを作ることができない。ひきこもっていて、「自分が触ったものを捨てられない」という人など*1。 ガタリも、みずからをまとめられない苦痛を語っていた*2。 自分をまとめられない、という苦しさから、党派性と自己を《現実の集団的構築》とし…

党派の分析、分析の党派性

つながりを生きるためには、党派の分析が要る。 「ひきこもりの治療」や「全面肯定」が、関係者への洗脳のかたちをしていないかどうか。 つながりを生きることは、必ず党派性を生きることになっている。 ひきこもる人は、孤立したカルト的党派。 意識生産の…

制度分析の技法論

本当に必要な制度分析を行なっても、それはほぼ間違いなく、制度的理由をもちだして拒絶される(「それをやると○○さんが解雇される」「○○さんが忙しいので」etc.)。 それまで制度分析の必要を語っていた人たちも、いざ自分の主観的惑溺を分析されると、強い…

党派性の分析――現実の集団的構築

カルトとスピリチュアリティ―現代日本における「救い」と「癒し」のゆくえ (叢書・現代社会のフロンティア)作者: 櫻井義秀出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2009/01/01メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 42回この商品を含むブログ (12件) を見る …

問い直しの原動力としての《存在論的不安》

ひきこもりの〈ゴール〉―「就労」でもなく「対人関係」でもなく (青弓社ライブラリー (49))作者: 石川良子出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2007/09/22メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 144回この商品を含むブログ (28件) を見る再読。 〔本書に関してで…