2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

《 学習 III 》

学習IIの進行プロセス上の変化」であり、選択肢群がなすシステムそのものが修正される変化とされる。 (レジュメ) 「コンテクストの学習」を起こしたり、起こさなかったりを自在に調節できる。 学習 II の起こり方を調節できる状態。 かなりハイレベルとい…

《 学習 II 》

ベイトソンの学習理論でもっとも理論的な貢献度が大きいのは、この「学習 II」の発見である。 それは「学習 I の進行プロセス上の変化」と定義される。 「学習 I」が連続的に起こるとき、学習効率が向上し、学習の速度がはやくなる*1。 (レジュメより) 学…

《 学習 I 》

反応がひとつに定まる定まり方の変化。 古典的な「パブロフの犬」など。 慣れの形成過程、抑制過程など。 実験心理学のラボで最もふつうに見られる学習。 ベイトソンはここではじめて、「コンテクスト」について言及する。 「学習 I」は、同じコンテクストが…

ゼロ学習

刺激と反応が一対一対応で、変化がまったく起こらない状態。 機械的な運動。 自動人形や自動ドアみたいなもの。 「試行錯誤によって修正されることのない(単純または複雑な)一切の行為が成り立つ領域」。 たとえば、統合失調症の常同行為、強迫性障害の強…

 斎藤環 「脳はなぜ心を記述できないか」 講演レポート 2

【講演レポート1】、 【講演レポート3】、 【講演レポート4】 ベイトソンの学習理論 「心脳問題」については私(斎藤)の思考実験を含むので聞き流してもらってもいいですが、ここから先はとても役に立つ思考ツールの紹介になります。 ベイトソンは、生物…

器質的主体(OS)と、精神分析的主体(PS)

OS は「Organic Subject」、 PS は「Psychoanalytic Subject」の略。 人間の認識は、「同一性」の認識と、「差異性」の認識に大別できる。 「同一性」に対しては脳の器質的なものの機能が優位。 「差異性」の認識については脳は無関係で、ソフトウェア的なも…

クオリア問題

いま、心脳問題のいちばんクリティカルな、重要なトピックと考えられている。 日本では茂木健一郎氏が旗振り役。 「主観的質感の起源を脳内に求めることが可能か?」という話。 クオリアとは、「赤の赤らしさ」や、「バイオリンの音の質感」、「薔薇の花の香…

「心の活動は、脳の活動に完全に翻案できるか?」

大まかな比喩としてパソコンで考えてみると、次のようになる。 器質因: ハードウェア(CPU) 内因: オペレーション・システム(Windows、MacOSなど) 心因: ソフトウェア(アプリケーション) パソコンが故障した場合、私たちは「どのレベルの異常か」を…

学問の倫理としての「記述の限界」

《記述》というのは、科学や精神医学でよく使う言葉。 真実を「発見する」のは科学の重要な機能であるとして、「いかに現象を記述するか」というのが非常に大事。 「記述の限界」を踏まえなければならない。 「このパラダイムでどこまで記述できるか」「ここ…

精神医学: 「原因論の三分類」

『社会的ひきこもり―終わらない思春期 (PHP新書)』は1998年末の出版だが、じつは同じ年の少し前に『文脈病―ラカン・ベイトソン・マトゥラーナ』という本を出していて、こちらが実質上のデビュー作。 これは、「心脳問題」への自分なりの回答だった。 精神医…

 斎藤環 「脳はなぜ心を記述できないか」 講演レポート 1

斎藤環 「脳はなぜ心を記述できないか」 講演レポート 日時: 3月6日(火) 14:00−16:00 場所: ユメンヌホール(大阪大学人間科学部東館 2階 207講義室) 概要: 脳科学ブームの昨今、脳で人間の心や社会が説明できるかのような言説がまかり通っている。 …

親密圏と正義

正義・家族・法の構造変換―リベラル・フェミニズムの再定位作者: 野崎綾子出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2003/08メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 68回この商品を含むブログ (22件) を見る北田暁大氏の引用に興味を惹かれて入手し、少しずつ読み進め…

斎藤環「脳はなぜ心を記述できないか」

3月6日、参加してきました。 近日中にレポートをアップしたいと思います。

去勢と自意識――「自分の現実がうまく構成できない」関連メモ

ひきこもっている人は、狂暴な規範的焦燥に監禁された状態。 ▼非常に特徴的なのは、発話が極端にイミのないものにしかなり得ないこと。 語っている自分自身の意味的貧血。 実存の弱まりは、「病気の事件」というよりは、規範・労働環境・本人の資質など、さ…

「自分の現実を構成できない」 メモいくつか

誰であれ、何らかの形で納得を形作って生きるとき、いつの間にかそこで現実を構成している。 「難しい理論を知っているから理論家」なのではなくて、誰でもすでに「小さな理論家」として生きてしまっている。 「現実は社会的に構成される*1」として、その現…

TBSラジオ『Life』「大人になるということ(Part3)」

9分30秒〜、柳瀬博一氏の発言以降の大意: 昔は、大人になるということは「頑固でもう変化しない」、逆に言うと「もう変化しなくても大丈夫」ということだったが、今は大人になれと言われつつ、「変化し続ける」ことも同時に要求される。 非常にキツイ。 「…

機能的な必要としての「現実の構成」

東浩紀氏によれば、規律訓練型から環境管理型に向かう社会において、社会生活は動物化している。 「情報社会の思想」より 情報技術は人間を 動物的には 幸せにするが人間的にはあやしい (中略) 快を増やすが 自由や世界性の感覚を奪う 「とにかく人間的に…

「オールニートニッポン「ネオニート」特集」

3/16のオールニートニッポンは、新刊『親より稼ぐネオニート―「脱・雇用」時代の若者たち (扶桑社新書)』(扶桑社)を発表されたばかりのフリーライター兼エディター、今一生さんをゲストにお招きして「ネオニート」特集を行います! 働きたくない、でも金はほ…

芥川龍之介 『河童』 (Online Book)

http://www.yakushima-hotline.jp/venus/category3/index.html すごく読みやすいです。

当事者性――言説構成とナルシシズム

「アカデミックな」だけの議論に関わっていると、自分のナルシシズムの暴走を止められなくなる。 言葉の努力にひっかかりがなくなって、メロメロになる。 イライラして苦しく、努力を続ける意味が見えなくなる。 当事者性は、私にとって去勢の指標なのだが、…

メモ――順応と制作

単に「順応する」では救えない何かを問題にすることでしか、自分や他人を尊重することはできないと思う。 他人を怖がったり、生きていることを怖がったりすることはできても。 ▼逆に言うと、単なる反発も不毛でしかない。 単なる順応では、すでに成立した動…

小倉にて

10〜11日と、小倉の「北九州市立精神保健福祉センター」にお邪魔*1。 保健師・臨床心理士・精神科医・福祉職のみなさんによる熱心な勉強会が開かれており、たいへん強い刺激を受けた。 何人かの方と共有できたのは、製薬会社の利益主義への怒り*2。 個人的な…

ひきこもりというのは、「自分の現実をうまく構成できない」という問題だと思う。 ひきこもるという行動は、その主観的脆弱さへのリアクションとして生じる。 病気として構成できないのではなく、いわば政治的な弱さとして構成できない。 「大切なことを努力…

「自由心証主義」

同じく「“admissible evidence”と「証拠」」より孫引き。 自由心証主義 じゆうしんしょうしゅぎ 証拠資料に基づいて事実の認定をする場合に,証拠の評価について法律上の拘束を設けずに,裁判官の自由な判断にまかせるたてまえ。 法律上の拘束を設ける法定証…

「証拠」

「“admissible evidence”と「証拠」」より孫引き*1。 admissible は、「容認・採用され得る」「地位につく資格がある」という意味。 evidence は「証拠」。 証拠 しょうこ 裁判をするには,まず,当事者が主張する事実の存否を確定することが必要であり,こ…

マイノリティと「苦痛の枠組み」

ひきこもりの話は、ほとんど理解されない。 その問題に経験者として取り組もうとする苦しさはさらに理解されないが、他のどんなジャンルや労働についても、同様の「理解されない」事情があるはず。 そもそも苦痛は、数値化されない「主観的訴え」でしかない…

雑誌『ビッグイシュー』 第67号 発売中

斎藤環さんと私の往復書簡 「和樹と環のひきこもり社会論」、 今号は私で、『狂信的な合理主義』です。 本屋さんでは売っておらず、すべて立ち売りです。 販売場所はこちら。 各販売員は、バックナンバーも大量に取り揃えて立っておられます。 ▼ひきこもり問…

「「泣き寝入り」という言葉の暴力」(高橋りりす)

「泣き寝入りした」と言われる被害者も実際には必ず、なんらかの対応をしている。 私の場合も人に相談したり、大学のさまざまな窓口に訴えたりした。 もし大学側がきちんとした対応をしていれば、私は「泣き寝入りした」などとは言われなかったはずだ。 つま…

理不尽感としての「泣き寝入り」

交渉弱者としてのひきこもりの問題を、正義やリベラリズムの議論と架橋できないか。 人権や労働問題に解消できない、ひきこもりに特有の「困難のディテール」は、どのように構成されているか。 それは社会的には、どのように位置づけられるべきか。 拙著(20…