2008-01-01から1年間の記事一覧

「何をすれば勤勉に取り組んだことになるのか」

就労問題やひきこもりに取り組もうとする事業そのものは、どうあれば勤勉であったことになるのか。 やっつけ仕事のアリバイづくりばかりで、膨大な予算が惰性で流れ込んでいます。 「勤勉さ」のスタイル自体が間違っている――そこから考えなければ。 ひきこも…

しごとをめぐる事業・メモ

■私のしごと館「館長からのメッセージ」: 私のしごと館においては、若い人たちが早い時期から職業に親しみ、自らの職業生活を設計し、将来にわたって充実した職業生活を送ることができるよう、様々な職業に関する体験の機会や情報を提供するとともに、必要…

「引きこもり相談窓口設置  厚労省が予算要求へ」(共同通信)

厚生労働省は23日、引きこもりの人や家族からの相談専門窓口となる「ひきこもり地域支援センター」(仮称)を来年度、すべての都道府県と政令指定都市に設置する方針を決めた。来年度予算の概算要求に関連経費を含め約5億円を盛り込む。 (略) センター…

「存在する」ことは、「属する」こと

「カフカの言葉」より: 「sein」という語には、ドイツ語で二つの意味がある。 《そこにある》と、《そこに属する》。 Das Wort bedeutet im Deutschen beides: Da-sein und Ihm-gehören.*1 ひきこもっていても、「属している」。 生き延びるためには、どこ…

「順応するためには、順応するな」

順応しようとすればするほどできなくなる、と感じている私にとって、「順応したいと思うなら、順応しようとするな」というのは、なまなましい意味を持つ。 順応するための臨床に、政治的分析*1が必要だと思うのは、そういうことだ。 大文字の政治的主張が先…

雑誌『ビッグイシュー』 第101号 発売中

斎藤環さんと私の往復書簡 「和樹と環のひきこもり社会論」、今号は私で、『役割フレームへのひきこもり』です。「逃げずに説得してみろ」という前便での問いかけに対しては、なるだけ直接的に答えようとしました。 しかし、それが最善だったのかどうか。 往…

症候的に回帰する労働としての、順応分析

環境を与えられたように見えても、順応できない。 「単に順応」しようとしても、どうしてもこの点に帰ってきてしまう。 「社会的排除」はマクロな政策課題だが、順応をめぐる苦痛臨床はマイクロ・レベルの課題になる。ここに失敗すれば、マクロに用意しても…

GYAOで『2001年宇宙の旅』を観ながらのメモ

冒頭 時間がゆっくりすぎていく 労働痕跡のほとんどない地表 物質を操作することで起こす変化(工学、物理) でも現実は現実のまま 愛着を持てない現実 私という場所で愛が実現しない 現象としてはどうでもいい 労働過程の編成・あり方(歴史的成果として) …

語る人じしんの順応

「順応の現象学」を研究する人は、自分が何に順応しているのかを語らないと。(現象学という順応) プロジェクトに自分が順応したことで、周囲の誰かが利用されたり順応できなくなったりしているかもしれない。 同席しているだけで、両者は何かに順応してい…

adapt

『プログレッシブ英和中辞典』より。 名詞形は「adaptation」。 【他動詞】 1. …を(必要・目的などに)適応・順応させる、(…に合わせて)変える ; …を(…するように)変更する ; (…用に)適合させる ; 《〜 -self》(新しい環境などに)順応する 2. 作…

映画「台風クラブ」

衛星放送でやっていて、全編を観た。 もう何度目だろう。 観はじめてすぐ、80年代の10代に引き戻され、ずっと泣きそうな精神状態になる。 ・・・・すべての場面が、画像の質感まで含めて、こっちの肉に食い込みすぎている。 うかつにこの映画について話して…

雑誌『ビッグイシュー』 第100号 発売中

斎藤環さんと私の往復書簡 「和樹と環のひきこもり社会論」、今号は斎藤さんで、『観客席に「臨床」はない』です。 斎藤さんとのすれ違いが、さらに決定的になってしまっています。 非常にデリケートで理解されにくい主張について、800字という字数制限で往…

「場所の分析」に対する排除――自己愛の蓄積

私がこれまでに接した多くの人たちは、とにかく前向きに学問や趣味に順応できればいい、順応できればその事情について分析なんかしなくていい、むしろ分析なんかしたがるのはお前ができないからだ、という。 彼らのプライドは、「すでに順応できている」とい…

「読み合わせ」

ある地域の「若者サポートステーション」オープニング・イベントで講演させていただいたのですが、やはり《読み合わせ》という表現に、強い反応をいただきます。 申し上げているのは、次のような説明です。 私たちにはそれぞれ所属や立場があって、できるこ…

「コネクションズおおさか」開設記念イベント 聴講

記念対談:「若者の支援の現在、社会的な支援のあり方について」(PDF) 玄田有史(東京大学教授、『ニート―フリーターでもなく失業者でもなく』等、著書多数) 斎藤環(精神科医、『社会的ひきこもり―終わらない思春期 (PHP新書)』等、著書多数) 工藤啓(…

場所の分析

制度への倒錯的順応主義*1やフェティシズムではなくて、お互いの役割関係への距離と、体験されたトラブルの素材化が必要だ*2。 「今の世の中は制度順応とフェティシズムが支配しているから」と、それだけに頼ってみずからの社会参加をマネジメントする人が多…

ひきこもりメモ

ひきこもりとは、政治的硬直であること。 孤立した政治的硬直をどう解きほぐすか*1。 私は発達障害も、「孤立した政治的委縮」という大きな枠の中で見ている*2。 本屋に寄ったら、売上総合ランキングの第3位が『発達障害の子どもたち (講談社現代新書)』だっ…

「読み合わせ」という考え方

ある地方都市で、ひきこもりの親の会の集まりにお邪魔してきたのですが(場所は保健所)*1、「読み合わせ」という比喩での説明が、すごくいい感じです*2。 私たちは、それぞれの「役割」を演じています。 医者とか、親とか、ひきこもる本人とか。 それぞれが…

加害と被害――役割順応と、当事者的な自己検証

モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられない作者: マリー=フランスイルゴイエンヌ,Marie‐France Hirigoyen,高野優出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 1999/12/01メディア: 単行本購入: 22人 クリック: 332回この商品を含むブログ (43件) を見る 被…

雑誌『ビッグイシュー』 第98号 発売中

斎藤環さんと私の往復書簡 「和樹と環のひきこもり社会論」、今号は私で、『「自明の前提」の前に』です。 ひきこもりについての話を、いきなりメタ理論にしてしまい、お互いの目の前の関係を具体的に考えない――その意味で、解離的な知的ゲームにはまりこん…

制度に絡む実存

メタ的に「制度とは」を論じると同時に、具体的に目の前の制度と付き合ってそこで揉みくちゃになって生きていかねばならないのだ、どんな時代になろうとも。制度をメタに論じるだけで、論じている自分自身の制度との付き合い方は優等生的でしかないというの…

「制度を使う」ことと法律

社会生活にはトラブルがつきものだから(参照)、小学校時代からリーガルマインド(法的思考)を少しずつ訓練しておくべき。法律談義を導入した紛争処理というのはたいへん traumatic な作業であり、長期的に馴染んでゆく必要がある。それをしないでいきなり…

交渉の体質

秋葉原の事件で、犯人が「派遣労働者」ではなく「ひきこもり」でしかなかったら、世間や政治はどう動いただろう(参照)。 既存の問題構図に事件が利用される*1。 本当に弱い立場にいる人間にとって、声を届かせる方法は「人を殺す」しかないのか。 ぜんぜん…

制度と実存の解離

慣習・学問・法人など、制度的なものが既に営まれているとして、そこに入っていくことができない。 先方の拒絶によって、また自分を絡ませられないことによって。本を読もうとしても、拒絶の力のほうが強い。 ひきこもるとは、政治的格闘から撤退すること。 …

みずからの当事者性こそが拒絶されている

アントナン・アルトー、ジャン・ジュネ、中上健次などが、80年代の「当事者」言説として持ち上げられた。そのいきさつに問題はなかっただろうか。 「当事者性をアリバイにするメタ言説」と、「メタであることをアリバイにするメタ言説」があるだけで、自分の…

《居場所》の政治と、解離的な知性

どうやって孤立を回避するか。その方法論で、立場が分岐している。なのに、そこを誰も語らない。 「社会的包摂」というが、自己を対象化する分析を試みれば、たいていの共同体からは排除される*1。 むしろ、分析の努力を通じて孤立が回避されなければ。つま…