西川美和監督インタビュー 1

http://www.cybercrea.net/culture/note_060627_01.htm

「映し出されているものが単に私特有の欠点ではなく、多くの人が抱えているであろう内面の矛盾に通じればいいなっていつも思うんです。 作品を世に送る時に、多くの人が共感できればいいけれど、という不安があります」
 ――自分の中にある負の感情をつむいで脚本化していく作業は苦痛ではないのだろうか。
「苦しいという感覚はないですね。むしろ自分が物を書いたり、作品を作ろうと思ったりするきっかけ、もしくは根幹は、自分自身の内面を切り刻むことではないかと。 ある意味、作ることというのは、自分自身に対してサディスティックな行為だと思っているので、淡々とやってるんです。 それが仕事ですから」
 ――きっと鶴が必死に自分の羽をとって反物を織るような作業なのに、それを自ら選んだ“仕事”ときっぱり断言する潔さが清々しい。
「登場人物はすべて自分の分身だったりするので、彼らには私自身がもっているいやらしさや、恥ずかしいコンプレックスが入っていたりします。 ある程度自分を痛めつけないと、人にも通じないと思うんです。 それができれば、それが物語を作る核になるというか」





http://ent.nikkeibp.co.jp/ent/career/01/index.html

 何年か助監督をやってきたなかで本当によかったなあと思えるのは、会社とかの枠組みで縛られているのではない、人間関係を築くことができたこと。 お互いの仕事の正確さとか信頼感だけでつながった関係ですね。 一度そういう関係性が確立されれば非常に温かいところがありますが、逆に言うと信頼関係だけで結ばれている関係なので、言葉のたったひとつで崩れることもある危ういものでもある。 だからこそ、仕事をしてきた経験そのものがものすごい財産だと思います。

 実は次回の新作も夢がヒントになっていて。 夢に発想を得てばかりだと不安だな、この先(笑)なんて。 その夢が、ものすごく窮地に追いやられるものばっかり。 そのときにとる自分の行動というのが、人として間違っているんじゃないかなぁ、なんて思うことがありますね。 夢って自分の潜在意識が出るらしく、結構ズルいことをしている(笑)。 でも、そんなズルさも、自分の知らない一面だったりするから興味深くて。

 夢のなかでは理性で抑えることのない「本当の自分の人格」が出てくるから面白いなあって思っていて。 一番よく知っているはずの自分に対しても新たな面を知るくらいだから、夢には“人間の複雑さや不可思議さ”を知ることができるチャンスがあると思う。 そんな、人間の奥深い心理を作品のヒントに生かすことはあります。

 自分が“本当に面白い”と思ってやることでしょうか。 この仕事は生活のための職業にしてはあまりにも割が合わなすぎるので、「食べて行くための手段」では決して無いと思うので。
 興味を持てないのにやっていてもしょうがないと思うから、持てなくなったら辞めたほうがいいと思いますしね。 私は常にそういう心積もりでいます。