「敵の武器(たる言語)を、敵以上に上手に使う」

上記2つの「拒絶理由」に関連し、こちらのコメント欄がとても興味深いのですが、ここでは「排除された者の戦略」について、少しだけ。


「親に捨てられた孤児」であった作家ジャン・ジュネは、そのあまりに見事な表現力が高い評価を得ているそうですが、次のように語っています(強調引用者)。

 まず最初に医学の博士論文を普通に書いてから隠語を使って書くというような芸当は私にはできない、私のような囚人にとっては、自分を拷問し抑圧するものの言葉を使って書かなければ、最初からなにも聞いてはもらえなかっただろう*1



先日、日記本文でたった一言「2ちゃん語」を使ったところ、強い反発を受けたのですが、これは実は大切なご指摘かもしれないのです。
社会に入っていけずに呻吟している引きこもり当事者(経験者)が、「漏れらなんてもうだめぽ」と隠語を使った自虐に走っても、それ自体には何のインパクトもない、というか「支配的な目線で自分を痛めつけているだけ」です。
2ちゃん語のすべてが「自虐系」だとは思いませんし、僕もこれから面白がって使うかもしれませんが、これだけ「粗暴な発言でお茶を濁す」人が多いなかでは、「見事に言ってみせる」努力のほうがよりインパクトがあると思うのですが、いかがでしょうか。*2


「引きこもり」においては、2ちゃん的な「アンダーグラウンド」な文化は絶対に無視できない。しかしかといってそれだけではどうにもならず、「厚生労働省」「法律」に代表されるような(あるいはPC)、正統的で「表舞台」の努力も必要になる。その両極のどちらをも無視できず、だから非常に難しい…。*3


このように書けば、僕が「天皇」に注目した理由の一端も、ご理解いただけるでしょうか。





*1:『20世紀文化の臨界』ISBN:4791758110 p.104。あるインタビューでのジュネの発言を、鵜飼哲氏が要約している。

*2:といっても、chiki(id:seijotcp)さんや鈴木謙介id:charlie_k)さんなど、2ちゃん語を駆使しながらも社会的説得力を維持できる方もいらっしゃるようで…。キャラクターの問題なんでしょうか。というか「年齢」もあるか…。

*3:「アングラ」と「社会的正当性」、その両者について、言語訓練が必要であるように思います。