宮台真司氏のひきこもり論と、高齢化

http://podcast.tbsradio.jp/miyadai/files/sensei20061006.mp3 (音声ファイル)*1
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少し文字起こししてみます。(強調は引用者)

 ニートって言われてる人たちの半分は、「経験を積んで一皮向ければ社会に堂々と出て行ける」といったタイプじゃない人たちなんですよ。 もっと根が深い問題ですよね。
 根源的に自信がなかったり、根源的に対人不信であったり、根源的に不安や恐怖を抱いていたり、あるいはコミュニケーション一般に何の意味も見出せなかったり、――わかりやすくいえば、生きることが難しい人たちですね。 こういう方々は、同じ「ニート」と呼ばれていても、職業体験をするという程度でうまい人生を送れるというふうには実はなってなくて、もっと別の手当てが必要なんですね。
 じゃあ別の手当ては何なのか。 難しいんですが、論理的に考えるとこういうことですよね。 つまり、昔はそういう若者はあまりいなかった。 今はそういう若者たちがたくさん出てきているということは、おそらく生育環境ですよね。 育ちあがってくる環境に何か以前と大きな違いが生じたんだろうと思われるわけです。 どういう違いが生まれたんだろうかということを分析して、まずい部分を行政的、あるいはNPONGOでも構わないんですが、補完してゆくという作業が必要なんですね。
 つまり生育環境そのものをいじらないと、うまく対処できないような若者層が半分。 それは職業体験型のプログラムというような形では救えない。 生育環境そのものを直さないと救えない。 ただ、まだそこまで、つまりニートにも二種類あるということはちゃんと気付かれていないし、特にいまお話をした二番目の問題は、街づくり・街のあり方そのものに関わる非常に根本的な問題だということも、実は気付かれていないので、ちょっとした対症療法で解決できるところに注意が行きがち。



番組冒頭で、子供向け職業体験テーマパークとして紹介されている「キッザニア」HP*2には、次のような言葉がある。

 「こどもたちの未来を開くカギは、ここにあります。」
 「こどもが主役のこどもの街。 キッザニア!」



全国ネットワーク「KHJ親の会」のアンケート(PDF)では、ひきこもっている人の4割が30歳を超えている。 直接お話を聞く中でも、38歳の私と同世代の事例は珍しくもなんともないし、先日お邪魔した地域では、現役でひきこもっているご本人が51歳、母親が76歳のケースがあった*3
「親の会や講演会に親が来ているのは、異例なまでに高齢化したケースだ」と見るだろうか。 宮台氏は上の番組で、「生育環境をいじるべき」というのだが、将来世代に向けては是非そうしていただくとして、「すでに長期間閉じこもり、中年期に突入した事例」については、どういう対処があり得るか。 ▼「街づくり」というのだが・・・


たとえば私は、ひきこもりとは関係ない集まりで自己紹介した際、かなり露骨に軽蔑的な態度をとられることがある。 ほかの人の体験談でも、「職場で過去のひきこもり体験を話した途端、同僚が口をきいてくれなくなった」などの話を聞く。
もともと人間関係や社会生活にしんどさを感じているだけでなく、「ひきこもっていた」という過去によって、ますます追い詰められる。 もちろん、元気な人ですら耐えられない過酷な労働条件が、これからもずっと待ち受けている。



*1:番組: 『TBS RADIO podcasting 954

*2:民間の企業だとのことだが、「私のしごと館」の信じ難いつまらなさ(建設費580億円+毎年赤字20億円が雇用保険料から注ぎ込まれ続けている)に比べれば、ずっと魅力的に見える。

*3:大学を出た直後に一度2年近くひきこもり、その後なんとか就労。 20年勤め上げたあと、50歳を目前に実家で引きこもってしまい、すでに2年が経過したとのこと。