対策として次の2段階を考える

  • ≪★何度脱落しても、自由に再復帰できる社会★≫という、あらゆるマイノリティ間で共有できる(と思われる)課題フォーマットを設定する。
    • 各マイノリティによって、また各個人によって事情(属性)は異なる。 各人は複数の属性をもち、帰属は複層的(「ひきこもりかつ女性」「障害があるが裕福」など)。 この「属性」レベルで「深刻度競争」を始めると収拾がつかないが、≪脱落しても復帰できる社会のほうが生きやすいじゃないか≫という、全員に利益をもたらす「課題」を共有できれば、各人の属性や境遇に関係なく、一緒に努力できる*1
    • 「脱落復帰問題」*2あるいは「再復帰問題」として大きなフォーマットを設定・共有したあとは、各マイノリティの個別問題*3、あるいは就労・住宅問題*4といった共有テーマについて、分科会的に精密化・再編成すればいい。 【重要なのは、課題の「編集」とその「共有」】


  • この大きな課題フォーマットは、既得権益層の利益にもなる課題設定であることを提示する。
    • 脱落経験を持たない人にとっても、「一度脱落したら終わり」という社会環境に幻滅やストレスを感じる人は多い*5。 つまり「脱落しても復帰できる」という社会環境への努力は、マイノリティではない人とも共有し得るはず。 【属性は関係ない、課題さえ共有できればいい】
    • 脱落への不安を持たない圧倒的富裕層・経営者や、国政レベルの既得権益層に対しては、「再復帰可能な社会のほうが精神環境が良く、生産性が上がる」といった説得を試みる。 つまり、「脱落者は可哀相なんだから*6、人道的に支援すべきだ」ではなく*7、「あなたや国全体の利益になる」ことを、漠然とした予測ではなく「データ」で示す。 【たとえばある会社では、法定雇用率に従って障害者を雇用したところ、「こういう人も居ていいんだ」ということで職場の精神環境が良くなり、会社の成績が上がった、という*8。 こういうデータが積み重なれば、理念的には「弱者支援」を共有していない人とも、≪再復帰問題≫を共有できる。*9






*1:この課題にすら反対するマイノリティ当事者は、「私の個人的課題をこそ最優先しろ!」と無条件に主張しているのではないでしょうか。 それだって「課題を共有しましょう」という呼びかけと提案であり、私が言っている「≪課題共有≫に向けて模索しましょう」という呼びかけと同じ構造のはずです。 ▼自分が苦しくなっている人は、どうしても「私の問題を最優先にしてくれ!」と言ってしまいますが(そして実際に課題の緊急性はあり得ます)、それでは「課題共有」がまったく模索できません。 そしてこの「課題の共有できなさ」が、マイノリティにとって極めて致命的な不利益になる

*2:杉田さんによる仮称

*3:「再復帰できない」にも様々なディテールがある。「履歴書の空白」、「育児休暇を取った女性」、「高齢者」、など。

*4:「就労問題」は「ニート」の話題性などから注目されているが、「住宅喪失 (ちくま新書)」も重要のはず。【参照:「復興住宅」】

*5:はてなダイアリー」内のどなたかがTrackBackと共にくださったコメント(どなたでしたっけ・・・)

*6:「共感主義」の限界。 【参照

*7:もちろん短期的・あるいは長期的な政策論にそうした議論が必要な局面はあると思う。 この辺については、「リベラリズム」等々の問題としてあらためて勉強したい。

*8:残念ながらソースを確認できず。 どなたか、そのようなデータをご存知ありませんでしょうか。

*9:手段はともあれ、「結果を実現する」のが政治的には重要のはず。 対案を示そうともせず「経営者の味方をするな」等の形式的理念ばかり口走る人は、まるで「課題を共有」しておらず、結果的に(自分を含む)弱者を窮地に追いやっている。 やりきれないジレンマですが、反論するのであれば、具体的に「共有できる課題」を提示すべきではないでしょうか。