実存と制度

福祉業界では、結婚を機に仕事を辞める「男の寿退社」*1があとを絶たないそうです。
以下、「高室成幸のケアマネさん、いらっしゃい!」より(強調は引用者)

 「就職した理由について介護労働安定センターなど各種の調査をみると、第一に『給与』を挙げる人はいなくて、『働きがい』を挙げる人が圧倒的でした。これは他の産業ではありえない数字です」(東京大学准教授、堀田聰子さん)
 「介護職のやりがい・働きがいには、利用者・入居者の笑顔、仕事を通じての発見・学習・成長、より良いケアに貢献できる手ごたえがあがり、意識の高さをみることができます」(同)
 では、入口で「働きがい」を挙げる人が辞める理由はどういうものでしょう。

  • 訪問介護員では、 1:自分・家庭の事情、 2:給与、 3:人間関係。
  • 施設介護職員で 1:待遇、 2:人間関係、 3経営者の理念・運営のあり方

となっています。

「若者支援にかかわろうと思った人が、全員ではないですけれども、倒れている」という工藤啓氏の発言を思い出します(参照)。 人文的にいくら “深い” 議論をしても、実務に貢献できなければ意味がない。
《働きがい》は、単に実存として処理するものではなく、政策や経営が取り組むべきテーマでもあるはずです。 それを総合的に考える方法論のなさが、「人間力*2といった、貧困で解離的な議論になっているように思います。



*1:この表現にこだわること自体、「女房・子供を養ってこそ一人前のオトコ」という、剥き出しのジェンダー・バイアスなのですが。

*2:これは厚労省のサイトです。