「全面肯定」のイデオロギーと、「オルグ」的支援契約
芹沢俊介氏が一部紹介しているように(p.234-5)、「ひきこもりの全面肯定」は、実際に一部の当事者に肯定的影響を持つのだと思う*1。
それは、「無条件に承認される」という呼びかけに応じて、承認イデオロギーの繭(まゆ)の内側に出てきたにすぎないのだが、この状態に親が資金を出すのであれば、それは「引き出し的な支援」として、(事後的にでも)契約関係が成り立ち得る。 あるいはそれは、ひきこもり問題を媒介にした、一種の思想運動(弱者承認のイデオロギー)に、本人が自分の苦痛を通じて興味を持ち、そこに親が資金を与えるという構図になる。
この思想運動の本当の主体は、支援される当事者本人ではなく、「覇権的なイデオロギー」そのものだと思うが*2、このイデオロギーへの賛同を通じて、誰でも「承認される」ことができる。 親も、活動への「支払い」において承認され、ひきこもる本人の肯定を通じて、家族ぐるみで承認される。――まさに「オルグ」の手法を感じる。