「成熟とは、自己愛の安定」

斎藤環: 成熟とは、自己愛が安定すること。 つまり、不完全な自分を肯定できること。 所属も仕事もパートナーもなく、対象のない自己愛は非常に不安定。
 ひきこもっている人の発想が「一発逆転型*1」になりがちなのは、リアルな自分への極端な否定感情ゆえ。
 所属も仕事も失った状態では、自分を肯定的に確認する機会をまったく失っている。 「楽だろう」と思われるかもしれないが、とても耐えられるものではないはず。

リアルな内発的去勢(欲望の道)の前に、尊大な自意識でしか自分を支えられない。
誇大妄想と過剰卑下の両極端ではなく、「相応の自信と相応の落胆」という小振幅に落ち着くことが必要だが、外側からその理想形だけを押し付けてもどうにもならない。
トラブルを維持したいと思えるような執着心を通じて、私たちは自尊感情を維持しているのではないか。 ■リアルなプライドを作製する労働の指針となる「倫理的固執」は、恣意的に選べるものではない。





*1:「F1レーサーになりたい」など