議論の雛形と宿題

著者のお二人が試みたのは、ものすごく独特の「当事者語り」に見える。 個人的な体験や執着心が理論的な話と往復し、議論の強度を生んでいる。 「こんなふうに感じる自分はどんな場所に住んでいるのか、これからどうなってゆくのか――どうするつもりなのか」。 ▼地理的な固有名だけでなく、さまざまな私的事情をこの議論の雛形に当てはめればいいのだと思う。
私の宿題は2つ。

    • 「ひきこもりの心理的地図」は、どういう事情になっているか。 居住地域にそこまで思い入れはあるか。 ▼私は神戸・三ノ宮について、ほとんど駅と本屋しか知らない。 外界に対して、目線が萎縮している。
    • 阪神大震災直後の異様な都市体験。 ▼震災一ヶ月後に神戸から京都に向かったのだが、潰れた家屋や斜めになったビルを見続けた後、整然とまっすぐに立つビル群を見て無性に腹が立った。 「阪神間は潰れているのに」というのみならず、「きちんとしている街」そのものへのどうしようもない苛立ちだったと思う。