フロイト「ナルシシズム入門」

フロイト著作集 5 性欲論・症例研究』から少し引用。

 誇大妄想はおそらく対象リビドーの犠牲によって生じてきたものである。 外界から撤収されたリビドーは自我に供給されたのであり、こうしてわれわれがナルシシズムとよぶことのできる一つの態度が生じてきたのである。


 激しいエゴイズムというものは罹患を防ぎはするが、しかしついには病気にならないために相手を愛しはじめねばならず、また拒絶されて愛することができなければ、病気にならざるをえない。 たとえば H・ハイネ(H. Heine) が世界創造の心理過程を想像して歌っている次のような範例にしたがって――


         病こそはたぶん、創造のあらゆる
         衝動の究極の根拠であった。
         創作しつつ私は治癒することができたし、
         創作しつつ私は健康になった。


 われわれは、われわれの心的装置のなかにはとりわけある一つの能力があって、もしそれがなければ苦痛に感じられたり、病原的な作用をいとなんだりするであろうようないくつかの興奮を処理する任務がこれにあたえられている、ということを知っている。



「症状を生きる」こと。
「治す」のではなくて。