「ひきこもり」=「富裕層」?

本田氏は、昨年11月22日(『「ニート」って言うな! (光文社新書)』脱稿と同時期*1)、関西大学での講演会において、ひきこもりは「富裕層においてのみ可能」という趣旨の発言をしている。▼「働かない子供を扶養できているではないか」ということだろうが、富裕ではない事例は多数存在するし、すでに貧困ゆえの殺人(心中未遂)や、餓死事件も起こっている。ひきこもりは、「貧困だったら家を出られる」という素朴な話ではない。▼長期化・高齢化する「ひきこもり」業界においては、むしろ経済的逼迫こそが差し迫った課題であり、最大の不安要素となっている。

    • この件は講演直後にご本人に指摘し、以後はそのようなことはおっしゃっていないと思うし、『「ニート」って言うな! (光文社新書)』には、「ひきこもりはお金持ちだけ」云々は登場しない。▼本に登場しない発言を取り上げたこの件は、やや過剰な揚げ足取りに見えるかもしれない。しかし、「ひきこもりはお金持ち」というのは、あまりにも繰り返し登場するステレオタイプな憶測であり、「ひきこもり」が政治的に忘却される大きな理由となっている。影響力ある方の典型的かつ重大な誤解として、あえてここで取り上げさせていただいた。【本田氏は、その意味でもメディア機能を持っている。】