≪トラブル≫のレベル分け――「業務内容」と「雇用環境」

玄田有史氏『14歳からの仕事道 (よりみちパン!セ)』には、「毎日がトラブル」という節がある(p.102)。
少し引用してみる。

そもそも仕事に、必ずこうしておけば絶対安心で大丈夫、ということはありません。今まで自分が経験したことがないようなトラブルは、しょっちゅう起こります。本当に毎日のようです。
(中略)
生産現場でトラブルや故障が続くとき、どこに原因があるか、その対応策を働く一人ひとりが真剣に考える。働く現場で毎日、そんな異常や不確実と格闘してきた経験を持つ人は、新しいトラブルに対しても、想像力を働かせて、自分の力で対応することができるようになる。
(中略)
トラブルを楽しんだほうがいいとまでは言いませんが、どんな職場でも必ず起こるトラブルと闘い続けて、それを乗り越えた瞬間こそが、もしかしたら仕事をすることのいちばんの醍醐味、やりがいを感じる瞬間、なのかもしれません。

とても得心のいく主張。
――しかし、ここで触れられている「トラブル」は、どうやら≪業務内容≫(顧客やノルマとの関係)*1に関してであって、≪雇用環境≫(労働運動系)*2に関するものではない。*3
そして実は私自身も、これまでは玄田氏的な意味において、「トラブル」という言葉を使ってきたように思う。



*1:オブジェクト・レベル

*2:メタ・レベル

*3:これは私の勝手な連想だが、「制度論的精神療法」の議論が、この「業務環境の双方おいて戦う」というモチーフと、関連するように思う。