「社会的排除」

小沢修司氏 『福祉社会と社会保障改革―ベーシック・インカム構想の新地平』 p.142 より

なかでも放置できないのは、安定雇用のない長期失業者たち(そこには多くの青年が含まれる)が労働市場から排除されるだけではなく、社会生活から次第に遠ざけられることであった。 ・・・【中略】・・・長期に亘って労働の機会から遠ざけられることは、無為な日常、強度の不安のもと自らを「価値ある社会的存在」とは自覚しえなくなることを意味する。 こうして、社会生活からの排除は人間の尊厳をも失わせ、アノミー状態*1に陥った社会からは連帯の条件は喪失してしまうこととなる。
こうして、社会的排除とは、「元気な青年・成人たちをつかみ、失業または不安定雇用を出発点として、生活の不安定化、住宅状況や健康の弱化、社会的地位の劣化・低下、さらには家族関係や私的援助、社会的紐帯の切断、そして社会(人間の共同社会)そのものから脱落という全過程を把握する概念」なのである。



 あるかたによると、日本ではこのテーマではまだほとんど研究が進んでいない、とのことです。





*1:規範や価値観が共有されなくなった状態。 デュルケムが『自殺論 (中公文庫)』の中で、「アノミー型自殺」として概念化した。