自分の紛争に向き合うことがカギになる

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▼この小説には「廃人」という語が何度も出てくる。つまり8050状況に突入した人は「廃人」であって恐怖の対象であり、登場人物の全員が、ひきこもる青年までが「中高年のひきこもり事例」を見下している。

▼人物描写や問題意識に厚みがなく、通り一遍の知識で書いてみた…という印象だったが、世のほとんどの人にとっては興味を持てない話題だし、込み入ったことを書いても敬遠される。これくらいの物語のほうが広く受け入れられるのだと思う。

▼作中で引きこもっているのは21歳の男性で、中学時代のいじめが直接的原因として描かれている。あくまで本人に寄り添って希望の持てる終わらせ方をしている、とは言えそう。ただし「本人が若ければ」「親に資産があれば」など、いくつかの条件つきでの希望。

▼中高年の引きこもり事例については、「ああなってはおしまい」という脅しのような描かれ方しかしていない。8050問題の現状と今後について考えるには、まったく別の物語が必要。

▼この作品では、裁判への取り組みが状況を変えている。これこそが支援事業にとっての重大なヒントかもしれない。直接的に裁判でなくとも、本人の抱える紛争要因にこそ正面から取り組んでみること。融和的な社会参加だけを考えるのではなく、「戦ってみる」こと。

▼裁判のような紛争対応だけでなく、就労を伴う継続的な集団参加にとっても、《政治的な党派性》は避けて通れない問題であるはず。この主人公にとっての「いじめの裁判」にあたるのは、それぞれのケースにとっては何だろうか。