幻想の回路に、相手を巻き込むこと

「俺は痴漢やナンパをしたことがない、やろうと思ったことすらないのに、どうして女性たちは、無条件的に被害者意識を向けてくるのか」――そういう疑問の一部に答えてくれる文章。


ハラスメント研修や自助グループのほか、中学以降の教科書などで、集団で読んで話し合う価値のある文章だと思う。


この社会には、「自分の半径1メートルを覆う『膜』のようなもの」を生きる男が、うようよ居る…


加害者たちが、

 「積極的になった覚えがない」 → 「なのに加害者にされた」
  →「俺はむしろ被害者だ」

という思考回路を生きていることを想像させる。


この問題を、他人事にできる男はいないはず。*1――とはいえこれは、男性側の理不尽な感覚を呼び覚ましもする。「これでは、生きているだけで加害者だ」



「なにをどうやっても、自分が加害者になってしまう」

これは、ひどい被害者意識になる。


私は加害者じゃないのに――というより、たしかに私は加害者になっているらしい、でもどうしようもない、こんなに耐えられないのは「お前が居るからだ」


加害と被害の間をあれこれと模索し、試行錯誤する回路がなければ*2、お互いに引きこもるしかなくなる。(それも出来なければ、相手を殺すか、自分が死ぬか)


「人間は、まずはお互いに不愉快」を前提にした議論が要る。
仲良くするのが当たり前、を前提にすると、ひたすら欺瞞になる。

    • この問題には、男社会における「男同士のいじめ」の問題も絡んでいるが*3、これも議論の土壌を作りながら、あらためて論じていくつもり。




【追記・参照】橋本聖子会長、高橋大輔に「キス強制してない」(日刊スポーツ )

 うたげは早朝5時まで続いたそうだが、その途中、橋本氏は高橋を呼び寄せ、突然抱きつき、体をよじらせて抵抗する高橋にキス。選手たちの目線も気にせずキス。周りで見ていたみんなが「何やっちゃってんの」と引いてしまうぐらい執拗にキス。高橋も観念した様子だったという。
 橋本氏は、高橋が大のお気に入りで、出場する大会を“追っかけ”るほど夢中だったらしいが、さすがにまずいと思ったのか、口外しないように周囲に口止めしていたと、文春は報じている。



「女性の味方をしていれば正義で居られる」とか、
「被害者ポジションが絶対的に善」とか、
そういう話ではない。



*1:まずは男が加害側として検証される。――しかし、女性だって同様の構図で加害者になることがある。▼私は20代前半のころ、50代以上らしき女性たちからさんざん迷惑を受けたが、その女性たちが示した言動は、ここに描かれた男の様子に近い。あるいはストーカー事案では、女性も相手の男を幻想に巻き込んでいる。

*2:それは社会的・集団的に用意することだ。

*3:女性に危害を加えないように見える男も、「女にモテる俺」という幻想に、周囲の男を巻き込む。