事案から透けて見える、制度の意思

行ってよかった。 佐藤秀明*1の講演:



学校・行政の責任者と、子どもたちのご遺族が一堂に集まり、
学校側が平然と嘘をついている会議の映像は、そのままマスコミで放映してほしい。


以下は池上正樹・加藤順子『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』の該当箇所、
会議の文字起こし部分より転載(pp.176-7、強調は引用者):

保護者1 5月に聞き取り調査をしましたよね。子どもたちの聞き取り調査の証言の中には、友だちが山に逃げようって言っていた子がいたという証言は、一切なかったということでよろしいですか。
加藤茂美・元指導主事 (大きくうなづいて)なかったです。
保護者1 でも、私が子どもたちの話を聞くと、山に逃げようって言った男の子たちがいたと、聞き取り調査のときに話したと言っていますが、それは子どもたちが嘘をついているということでよろしいですか?
加藤元指導主事 それは、私はそういうことは言いません。子どもがそう言ってるのでしたらば、私は、それは嘘だとは、もちろん言いません。私がまとめた報告書にはなかったです。
保護者1 加藤先生も聞き取り調査をされていますよね? 加藤先生が聞き取りした子どもたちで、そういうことを話した子はいませんでしたか?
加藤元指導主事 いなかったです。
(保護者席より、「んー?」という声が上がる)
加藤元指導主事 その、すいません。話しているお子さんって、だ、だ、だれっていうか…。*2
(山田元郎〔学校教育課〕課長、口に手を当てて合図を送るが、加藤元指導主事気づかず)
保護者2 (保護者2の名前)ですけども…。
(山田課長、遺族席の方をチラリと見てから、再度、加藤元指導主事に合図。お互いに目配せ後、山田課長は下を向いて、もう一度口に指を当てる)
保護者2 …うちの子は最初に6年生の男子児童の中で、山に逃げようって言う男の子がいたらしいけど、どうなの? って聞かれたって言ってたんですね。で、そのときに、おそらくメモを見ると、加藤先生と担任の先生が立ち会って調査したんじゃないかなと思うんですけど。
加藤元指導主事 確かに、私がそのとき、聞き取りをしました。担任の先生と私が聞き取りをしましたんです。
保護者1 そこで、山に逃げようと言う子どもがいた話は出なかったんですか。
保護者2 じゃ、うちの(子)が嘘言ったんですね。



今回の佐藤秀明氏のイベントで拝見したDVD映像は、まさにこの場面でした。


この映像は、直前におこなわれた大学生向けの講演会では、上映しなかったのだそうです。講演者の佐藤氏は、「学生は大人と子どもの境目にいるので、こういうのは見せたくない」とのことでしたが(大意)、私はむしろ逆ではないかと思いました。


学生さんにこそ、あれは見てほしい。
自分たちが、どういう管理思想に基づいて生きているか。


小学校から1分で到達できる裏山の入り口は、いまは学校側に封鎖され、立ち入り禁止になっているそうです。そのうえ石が積み上げられ、まるで震災当時にも人が入れなかったような印象になっているとのこと。

どういう手続きと権限があって、その入り口を「立ち入り禁止」にしたのか。石を積み上げた判断には、誰の意志が働いたのか。――これまでの状況からして、「印象操作や証拠の隠滅ではないか」という疑念が強まります。*3


ご遺族が裁判をしなければ、すべてが「なかったこと」になるのではないでしょうか。あるいは裁判すら機能しないなら、そういうことができるように、社会が設計されているのだと思います。

私は書籍や証言でしか事情を知らない立場ですが、大川小学校の事案で発動されている《制度の意思》は、誰にとっても他人事ではないはずです。



*1:NPO法人ここねっと」理事長

*2:【ブログ主の注】: ここは私の耳には、「誰なんですか?」と、はっきり問い詰めるように聞こえました。

*3:封鎖に正当な理由があるなら、どうして話し合いの上で決められなかったのか。