「ひきこもりなど支援で新法へ」(NHKニュース、動画あり)

 若者への支援をめぐって、麻生総理大臣は、先月の所信表明演説で、「若者に希望を持ってもらわなくては国の土台が揺らぐ」として、「困っている若者に自立を促し、手を差し伸べるため、新法を検討する」と述べました。これを受けて、政府は、長期間、自宅に閉じこもる「ひきこもり」の人たちや、いわゆるニートと呼ばれる若者など、困難な状況に置かれた若者を支援するための新たな法律の制定を目指す方針です。新たな法律には、こうした若者の支援にあたる地域の拠点づくりや、相談態勢の整備などを進め、若者やその家族が、地域から孤立することがないようなネットワークを作るための施策を盛り込むことにしています。政府は、若者の状況の把握や、若者に関する個人情報の取り扱いなどの課題もあることから、近く、内閣府厚生労働省、それに文部科学省など関係省庁による会議を開いたうえで、法律の具体的な内容の検討を進めることにしています。

【参照】:「引きこもり相談窓口設置 厚労省が予算要求へ」(2008年8月):

 厚生労働省は23日、引きこもりの人や家族からの相談専門窓口となる「ひきこもり地域支援センター」(仮称)を来年度、すべての都道府県と政令指定都市に設置する方針を決めた。



これから、支援センターや法案作成をにらんだ動きが続くと思いますが、気になるのは、こうした動きがすべて医師や親世代の発想に仕切られていることです。 「若者自立塾」は、すでに10億円単位のお金をつぎ込んでいますが(参照)、関係者にお話を伺っても、予算額に見合う活動になっているとは思えません。 活動の骨子となる基本的な発想は、古いままにとどまっています。
ありていに言えば、「規則正しい生活をして、叱咤激励されて社会復帰を目指す」というだけで、何の原理的な試行錯誤もない。 発達障碍や社会不安障害の議論はあっても、「社会に順応する」という根源的な葛藤についての、内在的な考察は見当たりません。 一方的に、メタ目線から「順応しろ」と言っているだけです。
単に叱りつけるか、そうでなければレッテルを貼って社会保障を与えるか。 これでは、社会順応をめぐる政策論として貧しすぎます*1。 苦しんでいる本人たち自身の格闘がどういう実情にあり、何が必要なのか。 それを内側から、あるいは関係者として考える必要があるはずです(誰であれ、社会順応の関係者です)。――逆に言うと、ひきこもっている本人や経験者を含む、取り組みを表明している人たちの側に、傾聴に値する施策案や活動が展開できているかどうか。 「法律なんて関係ない」とは言っていられないし、説得力のある対案が必要です*2


今後は、法律の具体的な条文や、センターの活動案との関係で、「支援の考え方」が問われるのだと思います。



追記:「ニート・引きこもりの自立支援へ「若者新法」 政府方針」(asahi.com、10月24日) はてブ

 政府は23日、ニートや引きこもりの若者の自立を支援するための「若者支援新法(仮称)」を制定する方針を決めた。新法の柱は、地域ごとに官民で協議会を作り、困難を抱える若者を多面的・長期的に支援する仕組みを作ることを想定している。来年の通常国会への法案提出を目指す。
 麻生首相が所信表明で「若者を支援する新法を検討する」と述べたことを受け、内閣府が法案作りに着手した。この日、厚生労働、文部科学、総務、法務など関係省庁の実務担当者を集めて初会合を開いた。

「行政機関と、NPO(非営利組織)など民間組織で協議会を作る」とある。



*1:私のしごと館」などもそうですが(参照)、何の策もないアイデアに信じられないほど膨大な予算がつぎ込まれ、本当に実験的な試行錯誤をしているところには、1円の予算も回らない、という事態が生じています。

*2:硬直した左翼思想や、不当な利権要求しかないのでは話になりません。