「ベーシック・インカム」について

昨日紹介した雑誌『大航海』No.56掲載の対談「インターネット・カーニヴァル」(斎藤環×鈴木謙介)には、次のような斎藤さんの指摘が出てくる。

鈴木 それでもこの格差を容認できないとして、「働け」と言うほうがいいのか、それとも「そこまでわかっているんだったら、何もしなくていい」「死にたきゃ死ね」と合意して彼らを見捨てていくのか、どちらかの選択を迫られていくことになる。
斎藤 それだけしかないのかなあ。たとえばひきこもり研究者の上山和樹さんなんかはベーシックインカムみたいな制度を保障して、働かない人でも最低限の収入を与えましょうという提案をしている。問題は多いですが。 (p.153)

当ブログでは確かにベーシック・インカムを扱ったが*1、僕自身は、この制度に強い関心を持ちつつ、まだ「提案をしている」というような疑いのない態度は取り得ずにいる。あまりに勉強不足でリアリティが測れずにいるのだが、ひとまず次のような疑問が消えずにいる。*2

  • ベーシック・インカムは、単なる「全員に分配を!」ではなく、「全員に一定額は保障する、しかし爾余の全ての社会保障を撤廃し、弱者支援を打ち切る」という仕組みではないか。
    • たとえば国民1人につき月額数万円が保障されるとして、健康保険等ほかの保障がいっさいなくなってしまうのだから、それだけでは歯医者にすら行けない(支払いはあっという間に10万円を超えるだろう)。健康体ですらそれなのだから、長期にわたって高額の医療が必要な大病をした場合はどうすればいいのか。あるいは、24時間の全面的な生活介護が必要で、現状では毎月数十万円かけなければ生きていくことすらできない身体障害者は、どうすればいいのか。*3

ベーシック・インカムの基本書すらよく読みこなせないままの暫定的メモです。
政治やら経済やらが絡んでひどく難しいのですが、以上の点に注意しながら、もう少し勉強してみます…



*1:上の検索ボックスで検索してみてください

*2:この考えは、ほぼある友人から教導してもらったものだ。

*3:ベーシック・インカムの導入によって最低限生活が保障されることにより、人々の心理状態が激変し、相互扶助の風潮が…」といった可能性は、いちおう考察余地として残したいが。これは、地域通貨についても言える。