「放置せよ」について

上山:「経済に詳しい人の一部には、次のように言う人もいます。『ひきこもりやニートというが、放置してもたぶん親の金でギリギリ食っていける。もちろんわずかに死者は出るだろうが、どんな社会にもそういう脱落者は出る。わざわざ何百億円も投じて、連中のご機嫌を取る対応策を講じる必要があるのか?』と」

会場では言いませんでしたが、具体的には『SIGHT別冊 「日本一怖いブック・オブ・ザ・イヤー2005」 (別冊SIGHT)』に掲載された、山形浩生氏による『ニート―フリーターでもなく失業者でもなく』書評(p.119)を想定していました*1
玄田さんは前半の対談で、「社会保障が破綻するから働け、というようなことは言いたくない」とおっしゃったのですが、やはりマクロな視点は必要だと思ったので。
今回も恐らくそうだと思いますが、「ひきこもり」というタイトルのついたイベントでは、参加対象者を限定しないかぎり、聴衆の多くは「当事者を抱えた親御さん」であり、そういう人は「うちの子供のために何が可能なのか」という非常に切迫した要望を抱えており、そういう人たちに「日本の社会は・・・・」みたいな大きな話をしても的を外す。でも、政策論的に「放置すべき」という見解が一部「経済の専門家」の中にあるのだ、というのは、重要な情報ではないかと。
玄田さんは私がこの話をしたとき、強くうなずきながら聞いていました。



*1:こちらに全文が引用されています。