「NHKスペシャル『フリーター漂流』を見る、聞く、議論する」にお邪魔してきました。いろいろ考えたので、メモ的にレポート。
- 参考 :
【★おことわり★:以下、たくさんの発言が引用されますが、いつもながら「逐語的引用」ではありませんし、ご本人たちの許可や校閲はいっさい得ていません。 ▼私は、労働問題についてまったくの素人であり、今回のレポートはいわば、「学部1回生によるゼミレポート」みたいなものです。語の運用間違いなどのご指摘は大歓迎ですのでよろしく。 ▼以下、多くは敬称略。】
「NHKスペシャル『フリーター漂流』を見る、聞く、議論する」にお邪魔してきました。いろいろ考えたので、メモ的にレポート。
【★おことわり★:以下、たくさんの発言が引用されますが、いつもながら「逐語的引用」ではありませんし、ご本人たちの許可や校閲はいっさい得ていません。 ▼私は、労働問題についてまったくの素人であり、今回のレポートはいわば、「学部1回生によるゼミレポート」みたいなものです。語の運用間違いなどのご指摘は大歓迎ですのでよろしく。 ▼以下、多くは敬称略。】
樋口:「私はニートや引きこもりの研究をしていますが、今日は『若者論』と『労働問題』を同時に考えたいと思って、このような形で企画してみました」
会が進むにつれ、この言葉がじわじわと効いてくる。
私は初見でした。私としては大事な情報が多かったり、個人的な言語訓練としても意味があると思うので、番組内容を少し詳しく書き記す作業をしてみます。
- 冒頭
- 21才男 : 「人間ロボットですよ」
- 22歳女 : 「私の代わりはいくらでも居る」
- 事例1:山端昭宏氏(21)
- ファッション・アパレル関係希望/中学卒業以来定職経験なし/通信で高卒資格を目指す
- 失業率が全国第1位の北海道(24歳以下は10%)
- 請負会社*1が面接
- 北海道で時給は平均700円/栃木で時給900円が見つかる(40時間残業で234000円)
- 正社員雇用を手控える企業と、短期就労を重ねるフリーターとを請負会社がつなぐ。フリーターは請負会社の「短期契約社員」となる。
- 管理者のちがい:
- 「派遣」:働く人は、勤め先の企業の下に入る
- 「請負」:働く人は、請負会社の下に入る
- めまぐるしく変わる生産ライン。当日の朝に、メーカー側から請負会社スタッフに「ライン変更」が告げられ、このスタッフがすぐさま現場に告知する。戸惑うフリーターたち。
- 事例2:橋掛輝人氏(35)
- 札幌出身/ホテルや旅行会社など5社の面接を受けるが落ちる/ようやく請負で見つける
- 橋掛さん : 「細かい仕事はイヤとか、朝眠いとか、若い子みたいに言ってられない」 「これ以上シタはない、上みて前向きにやる」
- 手先は器用ではない。 親が、初めての独り暮らしを心配していろいろ送ってきてくれた。 自家製の、土のついた人参など。
- 去年まで、橋掛さんは父親と運送会社を営んでいた。しかし不況下の競争の中、下請けまで降りてくる仕事は激減。 「1km走って90円」の仕事にしかならず、親子で働いて「1ヶ月7万円」にまで収入が落ち込む。 → 仕方なく息子が他の仕事へ。
- 山端さん、9月1日に就労し、2つ目の工場で9月7日に解雇。
- ラインで少し休んでいる時に注意を受けたが、注意者の言葉遣いに「カチンと来て」口論となり、パレットを投げつけてしまった。翌日、請負会社の担当者が寮まで説得に来て、「自分が悪いと認識してもらわないと困る。そうすれば再雇用の用意がある」と言うが、山端さんは「自分は悪くない」と言い張り、そのまま解雇。
- ナレーション:「半数が、契約期間の半年もたずに辞めていく」
- 請負会社はすでに1万社、1兆円産業。
- 行政の指導として、製造現場への人材派遣を解禁。 人員調整を請負会社に頼る。
- 製造業に送り込んでいるフリーターは100万人を超える。
- 請負会社スローガン : 「必要な時に必要な人材を」
- 請負会社スタッフ : 「社会貢献してますよ」
- 事例3:當野貴也氏(25)、妻・あゆみ氏(22)
- 結婚した今もフリーターを辞めるつもりはない。「やりたい仕事が見つかるまで、妥協したくない」
- 製造業現場での経験が豊富なため、メーカーとの調整やノルマ達成管理など、現場でのリーダー役を任せられるが、時給は他の人と同じ900円。
- 「過労とストレス」(医師の診断)で38度の熱を出して寝込み、1週間近く仕事を休む。遅れを取り戻そうと張り切ってラインに復帰したが、担当製品の売れ行き不振で生産量が落ち込み、残業で稼ぐつもりだったのに、勤務時間が余ってしまうほどノルマが少ない。
- 給料日。月に19日働いて(残業8.5時間)、「6万7000円」。前月より8万円減。将来の子供の教育資金なども考え、貯蓄もしたいのに、これでは貯蓄どころか取り崩し。
- 請負会社側に「やめたい」旨を伝えると、「現場のリーダーに突然やめられては困る」と慌てられ、30分説得される。しかし「残業も合わせ、月収14万円前後と聞いて契約したのに話が違う」云々と抗議。 結局やめる。
- 橋掛さん : 「職場を転々としていて、これでは将来につながる技能は身につかない」 「40歳・50歳になってまで『このまま』ってわけにはいかない」 → 親に相談しないまま請負会社の仕事を辞めてしまう。
- 帰郷した息子に対して父親 : 「我慢するのが仕事だ」「あきらめるな」「逃げるな」云々と説教。 請負会社経由の雇用現場の実状が、父親にはまるで理解できないらしい。 黙って聞く橋掛さん。
- 當野さんは、請負会社を通さず、直接工場に掛け合ってアルバイト雇用の形を得た。時給1050円。
- 山端さんは帰郷後、工事現場の仕事を半月で辞める。実家に居づらくなり、今は友人宅に居候。
- 橋掛さんは4ヶ月ぶりに本格的な就職活動。しかし請負会社窓口の男性から、「あなたの条件だと、非常に過酷なのが1件だけ」。車の組み立てラインで、ものすごい量の部品を立ちっ放しで取り付け続け、ノルマは1日に300台。担当者:「35歳*4というのは、製造業の現場のリミットなんですよね」
番組上映終了後、司会の樋口明彦氏が
の2点を焦点として挙げた。
脇田氏は法学部の教授でいらっしゃるのだが、労働者の権利闘争をめぐり、発言が法律用語で徹底的に武装されている感じで、必死に集中して聞いていてもなかなか理解できなかった。
以下、理解できた範囲だけを断片的に記す。
「派遣労働」とは本来、「一時的な、短期のもの」なのに(だからこそ成立する経営者受益的な雇用関係)、日本では「長期の間接雇用」にも「派遣労働」という言葉があてられており、この用語法が労働者に不利益な雇用事情を隠蔽している、というご指摘なのだと思う。
脇田氏のサイトに説明文があったので、引用してみます(強調は引用者)。
日本では、派遣労働を本来の「一時的労働(temporary work)」ではなく、「派遣された労働(dispatched work)」とする、「欺瞞的な用語法」が労働省やその関係者によって使用され、一般化してしまっています。 しかし、外国では派遣労働は、あくまで「一時的労働」です。 つまり、「長期の派遣」は、本来の訳では、「長期の一時的労働(temporary work)」となり、根本的に矛盾します。 そこで労働省や一部の研究者は、その矛盾をよく知っていて、意識的に「dispatched work」という用語を使って、日本では「長期の派遣(dispatched work)」が問題にならないという「すり替え」論理でゴマかそうとしてきた訳です。 この論理は、国際的にはまったく通用しないものです。
配布された資料に「イタリア全国派遣労働協約」が引用されており、その第19条「賃金:派遣先企業の従業員の賃金を下回らない」が強調される。日本では、同一労働であっても賃金はフリーターが(正社員より)格安。
*1:原告代理人(弁護士)は『過労自殺 (岩波新書)』著者・川人博氏
会場にいた職安職員の女性が返答。
ここで、かなりリアルな現場の活写が。
ここで、質問者と返答者の間でいくつか言葉の応酬があったのだが、「何もしていません(笑)」という一言が分かったぐらいで、必死に集中して聞いていたにもかかわらずやり取りの内容は信じられないぐらいに理解不可能だった。――「理解不可能」といっても、やり取りの内容を批判しているのではなくて、文字通りの意味で「難しすぎて分からなかった」という意味です。 ホント、外国語みたい・・・・。
質問者は、龍谷大学に教授職で勤務されているという脇田滋氏を名指しで指名。「先生は勤務先で戦っておられるのですか」。
他にも何かおっしゃっていたはずだが理解不能。
脇田氏の回答後、質問者から「キビシイ質問、すみませんでした」。
20代の発言者5人中、3人が私の知人で、残りの2人も「知人の知人」。
発言順はこの通りではないが、発言の大意と、私の感想を少し。