日本の裁判員制度と、韓国の国民参与裁判制度

以下の企画を聴講。 会場はほぼ満員で、100人弱の参加者*1

6月例会のお知らせ - 日本裁判官ネットワークブログ

私自身は裁判員制度に懐疑的で*2、死刑制度に賛成なので、会場の多くの方とは立場が違っていたと思いますが、現職の裁判官が私服で何人もおられて、挙手による会場質問や議論をされている状況が本当に刺激的でした。


韓国では、2008年1月1日に国民参与裁判法が施行されています(参照)。 韓国国立警察大学教授である李東熹(LEE DONG-HEE)氏の講演では*3、「韓国・国民参与裁判制度の現状と課題」と題された資料が配布され、陪審員経験者に対するいくつかの質問調査結果がデータとして掲載されています。 日本では非難ごうごうという感じの裁判員制度ですが、韓国の経験者では、否定的な評価を下している人がわずかしかいないとのこと(96.0%が肯定的)*4。 日本とは制度導入のいきさつも制度の仕組みも違うそうですが…

 今井輝幸大阪地裁判事補の「韓国における国民参与裁判の現状」(刑事法ジャーナル v.15 特集:インターネット犯罪対策の現状と課題(2009年)65頁〜,ブログ上では今日以後「今井論文」といいます。)によると,昨年1年間の国民参与裁判がなされた数は,韓国全土で60件だそうです。そして,日本でも,裁判員の負担の軽重を考える点で関心の高い審理日数ですが,60件のうち,56件が審理1日,4件が2日で,その審理日数で判決までなされています。これはホントに驚きです。

原則1日~国民参与裁判の審理 - 日本裁判官ネットワークブログ

講演では李東熹氏が、「今井輝幸さんとは10年来の知り合いだが、私以上に韓国のこの制度に詳しい」とジョークを飛ばされていました(大意)。 司会者の発言にもありましたが、日本と韓国で、今後司法制度をめぐって、影響関係が続きそうです。



追記2:参考:

韓国の国民参与裁判制度―裁判員裁判に与える示唆

韓国の国民参与裁判制度―裁判員裁判に与える示唆


*1:マスコミ関係者が複数おられたようです。TVカメラも入っていました。

*2:準備不足としか思えない

*3:質疑応答まで含め、通訳なしで日本語。 専門性の高い話を分かりやすく語られており、わずか数年の日本留学であのレベルというのは驚異的です。

*4:陪審員職務に対する満足度」で、「以前より良い」が67.2%、「以前と同じく良い」が28.8%。 ▼ただし、陪審員候補者(出頭義務者)の実質的な出頭率は58.4%。 2335人の出頭者中、陪審員または予備陪審員に選定されたのは540人(選定率23.1%)。 いずれも2008年度の数字で、李氏の配布した資料より。