「水増し正常化」と「境界性喪失」

小田: ぼくは現代の日本の精神病理のひとつの特徴は「水増し正常化」にあると考える。 精神病理の核心が薄らいでいって、たしかにここの症例も薄らいでいっている。 (略)
三浦: 「水増し正常化」というのは衝撃的な言葉ですね。 異常と正常の境界が曖昧になって、異常がどんどん正常と見なされてゆくということですね。

ご本人は「正常」らしいが、基準はわからない。

小田: ぼくは「境界性喪失の時代」といっています。 (略) 現実と非現実、正気と狂気、正常と異常、男と女、右と左といったような、これまで自分たちの生活を律していた対立軸が薄くなっている。 要するに境界がはっきりしなくなっている。 それは統合失調症的なメンタリティにとても近いものになってゆくわけです。

境界と対立が曖昧になってきた趨勢に対し、人為的にそれを強化・復旧すべきであるとする主張。