時代論

 雑誌などで1980年代論が熱いらしい。僕も80年代に10代を過ごしているわけだが、しかし僕にとっては80年代は、というか実は90年代も、「僕を拒絶した人や社会」の時代であって、「あの頃は楽しかった」とか思い入れたっぷりに語ることはできない。当時流行した歌やアニメをなつかしく思い出すことはあっても、すぐにその周辺にある嫌な記憶がからまりついてきて、ダメ。要するに自分にまつわる記憶の全てに「どうでもいい」という気持ちになっているところがあって、これは昨日書いた「欲望の減退」に通ずる。僕は本を出していて、よく「自分の子供みたいに感じるでしょう」とか言われるのだが、そういう幸福な気持ちにはあまりならない。むしろ「イタい」。記憶や作品を愛せない人間は自分のことも愛せないということか。