「中年無業者の実情」(玄田有史)

内閣府政策統括官「H17青少年の就労に関する研究調査」というページの、「付論 中年無業者の実情」より。

 2002年時点では、中年無業者は89万人に達し、35〜49歳全体の人口の3.7%を占める。89万人を男女別に見ると、女性が42万人に対し、男性が47万人と男性の比率がやや高い。さらに89万人をより細かい年齢階層別に見ると、35〜39歳で32.6万人(対人口比3.9%)、40〜44歳で26.7万人(3.4%)、45〜49歳で30.0万人(3.7%)となっている。 (略)
 1990年代から2000年代初頭に、中年無業者が急増していた事実が確認出来る。1992年に中年無業者は53.3万人であり、人口比も1.9%にとどまっていた。それが1997年になると62.0万人、人口比2.3%に上昇し、さらに5年後には89.3万人に増加し、人口比も3.7%と10年前に比べてほぼ倍増している。
 15歳以上35歳未満の213万人と35歳以上50歳未満の89万人を加えると、50歳未満全体の無業者は、2002年に300万人を超える時代に到達していた。バブル経済崩壊の影響が深刻化する以前の1992年には、50歳未満の無業者は180万人弱であり、「失われた10年」のあいだに約120万人の増加を記録していたことになる。

 非希望型の無業者数は、若年の場合はほとんど変化がなかったのに対し、中年では97年の23.6万人から28.4万人に増えている。
 求職型とニート全体(非求職型と非希望型の総和)を比べれば、中年ではニートの方が多い。中年層では92年から一貫して、ニート全体の人口が求職型数を上回り、数の上では「中年失業」よりも「中年ニート」のほうがより大きな問題となっている。

 35〜49歳全体で57.6%と、約6割が若年時代を含めてまったく就業経験を持っていない。 若いときから就職経験のないまま中年の無業者となった人たちが少なからぬ割合で存在する。

 家族が病に倒れて介護や看護のために働けなくなっている独り身の中年層も少なくない。