おびえ

 思えば僕は、たとえば野球の話を熱心にする人が恐かった。聞いたこともない名前が次々に出てきて、ものすごく生々しく具体的な話を展開する。どうも僕が抽象的な議論に沈潜したのは、世界にあふれる具体情報の洪水に恐怖したからではないか。その恐怖に萎縮して、ぼくの言葉はどんどん駄目になった。たぶん今、言葉の建て直しをやっている。