社会的・人文的観点

 後半が始まった。


 鈴木謙介さん*1、漫画家のイ・ヒョンソク(Lee Hyun Seok)さん(都立大に留学中)*2が、社会学の観点から興味深い指摘をしてくださる。高度成長期を終えた日本の事情、日本と韓国の若者文化の変遷、日本で好まれる宗教の変遷(来世利益から現世利益へ?)など、とても面白かったのだが、詳細は忘れてしまった(『中央公論』の記事でも取り上げられておらず、残念)。とにかくこれらの発言で、今回の会議でやっと呼吸ができた感じ。いやはや。


 鈴木・イ・両氏の社会文化論的指摘についても、韓国側の精神科医たちはとまどっていたようだ。そういう議論を聞かされること自体を想定していなかった、という風情。やはりポカンとしていた。【付記:と、僕は思ったのだが、斎藤さんのレポートによると韓国側の精神科医にも「社会的問題として」捉える方がおられたようだ(Yeo In Joong 氏)。これは僕の印象間違いか?】


 このとき、物凄い大活躍を見せたのが漫画家のイ・ヒョンソクさん。通訳やマスコミを含む会議参加者の中で、日本語と韓国語の両方を完璧に理解し、かつ両言語の理論タームを熟知しているのがイさんだけだったのだ。イさん自身の日本語がとても的確で問題をよく捉えているから、「この人に翻訳してもらえれば的確に伝わっているはずだ」という安心感がある。イさん自身はまず日本語で意見を述べて、それから自分でものすごいスピードで翻訳していた。他の場面はともかく、この社会学的な観点を導入した議論の場面では、イさんがいなければやり取りが成立しなかった。


 ところでこのイさんの発言で興味深かったのは、「日本に来て、すごく楽になった」という点。韓国では一人で外食をしていると「なんだアイツは」となるらしい。ところが日本では何も言われない。すごく楽だ、と。どうも韓国では、「仲間と一緒にいること」が当然の社会行動として要求されるようだ。
 うーん、それは確かに苦しいぞ。



*1:会議について、鈴木謙介さんご自身のエントリがあります。

*2:精神科医のイ氏と混同してしまうが、韓国では「名字」がものすごく少なくて、5つぐらいでほとんど全国民を網羅できるとか。だから銀行で呼び出されるときも、名字じゃなくて下の名前で呼ばれるんだって。