主張はヒント
id:hikilink さんの指摘や id:Ririka さんの「付記」を受け、21日の孫引きについて再コメントする必要が出てきたので、正高信男『ケータイを持ったサル』(ISBN:4121017129)を購入、通読した。(以下、お二人に対して悪意はないので念のため。)
「ひきこもりの原因は母子密着」というのだが、親の会には「夫婦共働きで放置したのが良くなかったのでは」という方もいるし、十把一からげには語れない。
「原因論」は、それだけで知的処理として意味を持つが、その際も政治性には充分注意すべきだし、基本的には「具体案」に結びつかない「犯人探し」は(自著にも書いたが)ストレスを増すだけだ。(ついでに言えば「社会が悪い」「教育が悪い」といった原因論も、「ではどうするか」との緊張関係になければ現場では意味がない。*1)
私個人は基本的にサルとなじんだ行動の研究者である。だから、もっともっとサルに近づいた人間が社会にあふれるのを見てみたいと願っている。
彼は「観察者」なのだろう。観察された私たちはそれではすまない。
ありていに言えば、「ひきこもりを巡る具体案」だけを考えている僕にとって、多くの「ひきこもり論」や「学問」が直接役に立つことはほとんどない。だがだからこそ、さまざまな議論*2やアイデアを断片的にピックアップして、考えるヒントとしたいのだ(引用にいちいち全面同意しているわけではない)。
21日の自分の発言を読み返してみたが、「ルーズソックス系」という言葉を自分で引用した*3以外は特に訂正の必要を感じない。ただ、引用やひきこもり論の政治性については(hikilink さんの指摘通り)これまで以上に注意深くあろうと思うし、必要なときにはもっと明白な反論に出るべきだろう。(ここには常に「コンスタティヴ/パフォーマティヴ」というテーマが付きまとう。)
★【付記:サル化/動物化】
「サル化」で、東浩紀(id:hazuma)*4氏の「動物化」を思い出した。
・東氏は「動物化」について原因らしいことは言わず、「肯定も否定もしない」。ひきこもりは「人間的」。
・正高氏は「サル化」について「母子密着が原因」といい、苛立ちを隠せない*5。ひきこもりも「サル化」。
とりあえずメモ。