本(ISBN:4062110725)にも書いたけど、男性ひきこもりの多くにとって、「女性と付き合えずにいる」というのは致命的な苦痛だと思う。「俺のようなダメ男は、一生恋愛もセックスもできないんだ・・・」と思い詰めて苦しんでいる人はすごく多い。*1
「オンナ欲しい」と言うとき、一番切実なのは「女性からの承認がほしい」ということだと思う。セックスというのも、思い詰めた男性にとっては「受け入れられた」感覚が一番大事だと思うし。――で、そのとき、やはりその「受け入れてくれる」女性は、自分から見て魅力的な女性であってほしい、ということじゃないか。
「カノジョは欲しいけど人付き合いはしたくない」というのは、上記の「受け入れてほしい」を一歩間違うと、女性の存在をすごく都合よく、身勝手にイメージしてしまう、ということなんだと思う。「オンナは好きだけど、人間は嫌い」みたいな。つまりオンナは「付き合いたい相手」ではあっても、「思い通りになる存在」――ややこしいコミュニケーションを経なくても何でもこちらの言うことを分かってくれるし、男性に不都合なワガママや欲望も持たないし、体を求めれば絶対に拒否しないし、どんなにダメダメ男であってもいつも「あなたは素敵よ」と言ってくれるし、僕への恋愛感情は絶対に枯渇することがないし――みたいな、なんというか、空想のアンドロイドみたいな存在としてイメージされていると思う。「僕との合一を前提にした存在」というか。*2
ひきこもりに関しては、こういう女性像というのは滝本竜彦さんの「脳内彼女」が有名ですけど*3、実を言うと僕は、こういう女性のイメージ化とは逆に、女性の存在がぜんぜん空想的になってくれなくて、それで苦しんでいる感じがあります。そう、数年前までは「空想の女性イメージで楽しむ」ということがあったような気がするんだけど、最近では、女性の存在は「オンナであるより前に人間」で、それがあまりにも素っ気なく「人間」でしかないので――つまり男と同じように臭くて汚くてダメダメな存在でしかないので――あるいは愛情を向けてもこちらを傷つけてくる存在にしか見えないので――、恋愛とかそういう感じになかなかならない。*4
僕は滝本さんとはちょうど10歳違うし、年齢のせいかとも思うのだけど・・・。でもとりあえず僕が先日から「ひきこもりの人はフィクション親和性が極端に低い」*5とかを問題にしているのは、そういう背景もあるかもしれません。・・・・いや、本当は僕も恋愛をアツク求めているのかな? よくわからん・・・。
でも、生身のニンゲン同士は「思い通りにならない」として、じゃあ僕らが普通にもつ人間関係というのは、どうなっているんでしょうね? お互いに思い通りにならないのは当然として、でも「気の合う人」とそうでない人はいますよね?
僕は今は、思い通りにならない女性、っていうか僕とは関係なく自分独自の欲望の道を進んでいく女性に好感を持ちますし、それは男性に対してもそうだし、自分自身もそういう人間になれたらなぁ、と思っています。
しかし、そうやって各人が「自分の道」をゆくのはいいとして、でもじゃあ「つきあう」というのは――とくに恋愛関係として女性と「つきあう」というのは――どういう関係なのかわからない。「性的な人間関係というのが分からない」という切実な困惑があるように思います。*6
余談ですが――僕は独身ですが――「恋愛」はものすごく難しいように感じるんですが、「結婚」というのは、なんだか「共同生活」という感じで、同居している友人関係みたいな感じであまり難しくないのかな、とか勝手に夢想するんですが、違うのかな・・・・(って、実は僕は結婚のつもりもないのですが)。
*1:一般に、愛情生活をうまく営むには、職業生活がうまくいっていないと難しい、と言えるかと思うのですが、いかがでしょうか。
*2:でもこれって、女性の男性への願望にも感じることありますけど。
*3:ちなみに精神分析では、男性が女性を愛する時には「空想 fantasme」の役割が決定的だったと思う。相手を空想に絡めとらなければ愛することができない、というような。 → それで僕は、「他者の空想に巻き込まれたら終わりだ」というドゥルーズの言葉を思い出すのですけど。
*4:唯一、マスターベーションの時にだけ「空想」しているとも言えるけど、最近は性のグロテスクな側面ばかりが鼻につくきらいがある。
*5:といっても、滝本さんの例もあるし、この仮説は一部にしか当てはまらないのだけれど。それとも年齢や条件に応じて変わってくるのかな。
*6:これは「ひきこもり」に限らず、恋愛のできない男性が多く感じていることだと思うんですが、いかがでしょう。女性は違うのかな?