犯罪

 昨日と今日2夜連続で、日本の治安状況についてレポートしたNHK特集。1980年代後半に「警察の信頼回復にはまず重大事件を解決せねば」という流れが生まれたらしく、以後、検挙率は減少の一途。現在は20%ぐらいだという。犯罪の5件に1件しか犯人が捕まらない。
 日本の1年間の犯罪発生件数は285万件・・・・。よく「ひきこもり」が犯罪の温床だというが、100万人いると言われる引きこもり当事者のうち犯罪を起こすのは一人か二人というオーダー。当り前だがひきこもっているのだから犯罪を犯しようがない。それに対して、世間の犯罪件数「285万件」って・・・・。皮肉なことだが、世間は引きこもり当事者を「犯罪者予備軍」として恐れるのかもしれないが、ひきこもっている人の多くはむしろ世間(外界)に対して「社会は犯罪だらけ」と恐怖している。僕の直接の知人だけでも殺人やレイプや強盗など、ひどい犯罪の被害を聞く。「他人事ではない」のだ。そういう感覚は引きこもっている人のほうが鋭敏だと思う。
 防犯カメラの設置など、「治安強化」について、左翼系の人はたいてい悪く言う。でもどうなんだろう。社会が保守化・暴力化するのはたいてい「不安」のせいだ。個人においても社会においても「不安のマネジメント」は重要だと思うのだが。
 そういえば(僕は神戸に住んでいるのだが)、あの阪神淡路大震災のとき、ライフラインが停まったにもかかわらず、この辺には犯罪の匂いはなかった。どころか無償の相互援助があたりまえの雰囲気だった。物々交換でさえなくて、たとえばうちのマンション1階には「ご自由にお持ちください」の張り紙とともに大量の食器類が。みんな食器類がほぼ全滅で困っていたので「渡りに舟」なのだが、誰も必要以上に持っていかない。そういうなんともいえない感動的な雰囲気があった。三ノ宮や元町の繁華街では窃盗事件もあったらしいが、はたして被災地の内部から出た犯人だったのかどうか。(「被災地のど真ん中でおにぎりや焼き芋を法外な値段で売りつけるボックスカー」の噂があったが、あれも県外ナンバーだった由。) うーん。いや、被災地の内部を共同体的に理想化して語るのは良くないな。やっぱり犯人も被災者だったのかもしれない。
 

 上記の番組、今日は「少年犯罪」がテーマだったのだが、斎藤環氏の本(ISBN:4569630545)によれば、少年凶悪犯補導・検挙数が最高だったのは1960年、8112人。1997年には2263人になっていて、検挙率の低下を含んでも「減っている」というのが斎藤氏の見解だと思うが、少年犯罪の体質というのは本当に変わってきているのかどうか。(とりあえず、コメンテーターたちの発言にとてもイライラした。とくに、「少年犯罪」でなんで米長邦雄なんだ?)