資質の経歴

 いずれにせよ僕自身の資質傾向と他者たちの資質(欲望)を絡み合わせることが問題なわけで。僕は、自分の経歴については本(『「ひきこもり」だった僕から』)の中で事細かに書いたが、あそこでは意図的に、自分が夢中になった(アニメや漫画などの)固有名詞は極力出さなかった。自分の世代の話に限定したくなかったので。葛藤の構造や性的な話など、世代に関係なく当てはまると思う話を書きたかった。このはてなは僕の個人的な日記だから、僕の個人的な嗜好を書き出してみようと思う。自分の好きなものについて考えるというのはこれまでほとんどなかった。(以下、ほぼ時系列を尊重しつつ。僕は1968年生まれ。)

  • 仮面ライダーウルトラマン
    • あまり覚えていないし、それほど熱心だったかどうか。
  • 不思議のメルモ
    • キューティーハニー」と並んで、性的に何ともいえない気分にさせてくれた最初期の作品。赤いキャンディを飲むと10才年をとり、青いのだと10才若返る、だっけな(逆?)。主人公のメルモちゃんは確か10才くらいだったが、観た当時は「すごいお姉さんだな〜」と。(だいたい僕は、30才になる頃まで、アニメやドラマの登場人物はみな「年上」に見えたのだった。サザエさんは24才の設定だというが今でも年上に見える(笑)。) 
  • キューティーハニー
    • 「メルモ」が優等生的興奮だとしたらこちらはいかがわしい興奮。当時僕は5才くらいだったはずだが、ハニーの変身シーンだけを目的に観ていた気がする。
  • 宇宙戦艦ヤマト
    • 今となっては効果音ばかりが懐かしくてならない。あとは大して思い入れない。
  • 「ひみつ」シリーズ
    • ハードカバーで漫画の体裁をもった子供向けの科学啓蒙書。大好きだった。
  • アルプスの少女ハイジ、母を訪ねて三千里
    • 登場人物そのものよりも、背景を際立たせるみごとな構図や画面構成に心うばわれていた。あとで知ったのだが宮崎駿の仕事だった。
  • ブラックジャック
    • 友人に教えてもらって以来、全巻揃え、単行本が分解するまで徹底的に読み込む。
  • えーと
  • ガンダムイデオン
    • 小学校5年の時で、クラスメイトは夢中になっていたのだが今ひとつハマれず。
  • うる星やつら
    • あまり熱心な視聴者ではなかったが、あたるの母親が銃を持って戦う、という回があって、その雰囲気の異様さに打たれて以後しばらく観ていたような。いま考えるとあれは押井守の演出だろう。ずっと「あの雰囲気」が出てくるのを待っていたがそれ以後は出てこなかった。
  • みゆき、タッチ
    • あだち充のマンガ全盛期か。登場人物はみんな年上だったけど、ずいぶん甘酸っぱい思いをさせてもらった。当時の僕は不登校・ひきこもりで、とにかくひたすら女に飢えていた。

中学時代は勉強が忙しかったりしたせいであまりテレビは観ていないはず。15〜16才(1983〜4年)、とくに1984年の1年間は、家に引きこもっていたせいで、テレビをよく観ていた。当時はゲームと言えば初代ファミコン。高校生がハマるには幼稚すぎた。

  • キャッツアイ、巨神ゴーグ銀河漂流バイファム装甲騎兵ボトムズ、ガラット
    • サンライズ全盛。どれも欠かさず観ていた。「これ以上のアニメの進化はない」などと思っていた。
  • 風の谷のナウシカ
    • ロマンアルバムを買ったのはこれが最後。漫画版も大好きで、ただ巨神兵のシーンだけはアニメの方がいいな、と。
  • 童夢、アキラ
    • やはり1984年、大友克洋にハマりまくる。プロ向けの漫画道具を一式そろえて、ひたすら模写していた。何度か漫画家になろうかとも思うが、自分はどうやらストーリーに執着したりそれを作ったりすることに熱意も才能もないと思って、あきらめた。

これでいったん僕のオタク生活は終わる。アニメも漫画もほとんど見なくなった。

  • 攻殻機動隊
    • 昨日は書き忘れたがこれはずいぶん別格。押井守では「パトレイバー」も観たが、うーん、そうか僕が押井守に求めているのはあの「静けさ」なんだな。アタマを、視野を、健全にしてくれるような、あの静けさ。いつもと同じようにテレビが鳴っていても、その背景となる存在の静けさの方が前面に出てくるような演出方法。見終わったあとには周囲の世界まで「演出・押井守」に感じる。
  • 火垂るの墓
    • これは僕にとって「泣く」映画というよりは真のホラー映画だった。とにかくもう恐くて恐くて。ちょっとした行き違いや偶然によって歯車がずれていって、けっきょく最愛の人も自分も死んでしまう。この作品、ロケーション的にちょうど僕の行動範囲にあたるのだが、方言もばっちりだし、僕の母によると背景となる街並みや部屋の中の様子、その他、場面設定がとにかく異様なほど当時に忠実らしい。映画の冒頭、清太さんが倒れこむのは国鉄三宮駅の構内。節子と清太さんが二人で電車に乗って出てくる建物は震災で崩壊した阪急三ノ宮ビル。二人がお母さまに連れられて海で泳ぐシーンは西宮の方の海水浴場(ああいう洋館建ちが本当にあったらしい)。庵野秀明が自分の描いた軍艦が黒く塗りつぶされていてショックを受けたらしく、気持ちはわかるが、あのシーンで軍艦のディテールが出ても興ざめだろう。
  • 批評空間
    • 友人に勧められて第1号からジジェクを読みはじめ、のちに東浩紀氏を発見する。なんだったろうあの熱狂は。
  • 耳をすませば
    • 27才のときに初めて見て、あぁやられた、と。「自分の過去の記憶もこうであったらよかったのに」という願望の核心を突かれたような。ああ自分はもうこの主人公たちより12歳も年老いてしまった、と絶望的な気持ちにもなった。そういう「理想」を描いていると同時に、その背景となる各シーンは異様なほどリアルで、たとえば登校シーン。雨降りの中、ムッと鼻をつくアスファルトの匂いを思い出した。そうだ、中学の時、たしかにそういう匂い、してたよなぁ・・・。あと、雫が野球部のやつに告られてあわてて断わるシーン。ああ・・・リアル・・・。
  • エヴァンゲリオン
    • ずっと存在を知らなくて、映画化される直前になって東浩紀氏経由ですごい作品らしいことを知った。とりあえず本屋さんで関連本を読んで勉強し、だいたいの設定を知ったところで最後の映画だけ観にいった。なんだかよく分からんが断片的に感動。それから再放送を観たりビデオを借りたりしていちおうTVシリーズも全部みたと思う。いちばん感情移入できる登場人物は「エヴァ初号機」。得体の知れない力を秘めていたり(幼児的万能感)、いじめられると暴走したり(第19話)、肝腎のところで動けなくなったり。魂は不本意なまま体の中に閉じ込められているし。斎藤環さんは「シンジ君は成長しないから感情移入できない」と言っていたが(ファウスト)、僕はどの人物もとにかく体の痛みを感じさせないので感情移入できない。パイロットの3人にしてもエヴァに乗って初めて「痛み」がこちらに伝わってくる。ファン達はアスカとかレイとか言ってるけど、髪の毛がオレンジだったり青かったりする時点で僕としてはあのセル画や絵の具独特のプラスチック系の匂いが鼻について駄目です・・・。

ジブリの他の作品とか、「X-MEN」とか「マトリックス」とかも観たけど「ハマる」まではいかず。