「制度を創る」(大村敦志)

家族の契約化」を論じておられた大村敦志(おおむら・あつし)氏に、『生活のための制度を創る―シビル・ロー・エンジニアリングにむけて』というご著書がある。
そのアマゾンのレビューに、以下のような説明が(参照)。

 本書の主題は、このような「制度」を「日常生活のために創る」にはどのようにすればよいか、である。児童虐待防止、共同子育て、マンションの建替え、新しいハウジング形態、リサイクル、共用自転車、NPO地域通貨といった身近な題材を用いて、それぞれ、「問題の所在」、「立法の対応」、「実例の紹介」、「検討と考察」を叙述している。

 第2には、第1の特長にもかかわらず、非常に強い理論的関心が基礎となっていることである。本書全体を貫くのは、「社会へのまなざし」と「制度構想への関心」であり、これは(広い意味での)民法学の伝統と理論を受け継ぐものであるといえよう。

 地縁や血縁といった伝統的な人々の結びつきが損なわれて久しい。しかし、人は周囲の人々や社会から完全に孤立して生活を営むことはできない。現代社会が抱える課題を克服し、より快適な生活を営むために市民自身の手で制度を創るにはどのようにすればよいのか。このような問題を考える上で有益な本である。



同書について、id:paco_qさん

 これまでは「制度」の構築は主として公法学(とくに行政法学)が議論し,民事法はアドホックな紛争解決の法というイメージが強くありました。これに対し同書は,現場から出発してシステムのあり方を模索する場合,あるいはより望ましいシステム(積極的な制度)を構築しようとする場合には民事法の役割が大きいことを指摘し,具体的な事例を豊富に提示して民事法による制度設計のあり方を検討しています。



制度を、単に「順応する」ものではなく、「自分たちで創意工夫して作る」ものと考えること。それは、単に弱者を特権視するものではなく、関係者全員を、交渉・契約の《当事者》とするものだと思う。