「あるべき社会」と実存

三浦: 「心の病の現在」で一貫して小田さんが主張しておられることは、個人の精神病理が自己像の問題と密接にかかわっているのと同じように、社会の精神病理もまたあるべき社会像に密接にかかわっているということです。 あるべき社会像をはっきりさせないかぎり、社会の精神病理は深刻になってゆくということです。 価値基準の問題。

制度設計としての「あるべき社会」と、各人の実存の話を分ける必要がある。
私自身は、 (1)制度設計としては「多様性と公正さ」を、 (2)個人の実存としては「症候への同一化」を、 議論の枠組みとし始めている。
労働問題は(1)だけだが、それでは実存の弱体化を話題にできない。
またひきこもりでは、あまりにも極端な「交渉の拙劣さ(実存の脆弱さ)」が、交渉という社会的行為自体を破壊している。