「堅気の労働」と、納得の調達

小田: 「自己実現病」「自分探し病」といえるかもしれませんが、要するに特別な生き方をしないと生きている価値がないという考え方です。 情報化社会の生んだ病理です。 自分の存在価値を自分の情報化によって決めるという発想はクリストファー・ラッシュが『ナルシシズムの時代*1で指摘していることですが、ごく普通に働いて真面目に生きていく生き方をみんな毛嫌いしたり馬鹿にしたりするようになってしまった。 それはまた、いまの政治の問題でもあるのではないでしょうか。 小泉内閣がこれまでやってきたことは、結果的に、郵便配達や工場労働者や学校教師や運転手などの勤労者を減価することです。 構造改革規制緩和、小さい政府とか言いながら、彼らをどんどん身動きが取れないようにしていった。 堅気の労働をしている人たちの収入はこの五年連続して減っている。 で、政府が応援したのは、ヴァーチャル・リアリティを操作する人たちだった。
三浦: ホリエモン的なものですね。
小田: 虚偽の風説で巨万の富を掴むという連中ですよ。

「地味な仕事に価値を見出すべきである」という主張も、実存レベル(趣味・信仰・倫理*2)と、制度設計のレベル(法や税制)を分ける必要がある。
「人生への納得」を、どこから調達するのか。 そのための選択肢と制度的整備は。
小田氏は、経済と「国民の規範」を結びつけている。 経済政策は、倫理的選択でもあることをあらためて確認。