アイ・メンタルスクールでの死亡事件を受けて*1、共同生活型施設の代表らが、「ひきこもり支援を成立させるための最低限の条件づくりに向けて」*2話し合っている。 さっそく入手。
以下、p.6 より引用。
- 本書で話し合われた共同生活施設のルール
- 対象者の範囲を明示していること
- 獲得すべき目標を明示していること
- 目標到達までの道筋を明示していること
- スタッフ数を明示していること
- 共同生活をする空間を公開していること
- 危機管理システムを明示していること
- スタッフの技術向上のための活動をしていること
- 費用を明示していること
- 暴力的支配・被支配を全面的に排除していること
- 食事を通して寮生の健康管理に気を配っていること
- 寮生から外部へ何らかの通信手段を確保していること
- 保護者会など親と施設が連絡を取り合っていること
アイ・メンタルスクール事件*3の際には、行政はそもそもこのような宿泊型施設が存在していることを把握していなかった。 「精神保健福祉法に基づく社会復帰施設」ではなく、行政に監督権限がないための事情だった*4。
ひきこもりの支援業界においては、各支援者や団体の間には、方針をめぐる論争や確執も多い*5。 このような状況下では、「そもそも『ルール作り』などというものを打ち出している時点で、権力的な振る舞いではないか」という抗議も予想されるが――それ自体は正しい指摘だと思う――、そもそも、ある程度声の大きな者がこうして問題提起をしなければ、「そのようなルールはおかしいと思う」という議論すら起こらず、単なる野放しの状況が存続してしまう。 これではどうにもならない。 誰かが声を挙げ、議論が始まる必要がある。
有名になった死亡事件のあとでは、施設の代表らは往々にして自己保身にのみ窮してしまいがちだが*6、この冊子では、公共的な意義を持つルール作りの道が、真剣に模索されている。 【思想や法律の専門家によっても、ぜひこの議論が共有されてほしい。】
- この冊子で話し合っているのは、
- NPO法人「青少年自立援助センター」理事長・工藤定次氏
- NPO法人「Peaceful House はぐれ雲」代表・川又直氏
- NPO法人「北斗寮」理事長・河野久忠氏
*1:事件当時、永冨奈津恵氏は次のように語っていた: 「まずは宿泊型施設の人々が集まって話し合い、何らかの指針を出した方がいいんじゃないかとも思う」。 ▼彼女は編集者として、本当に話し合いを実現してくださった。
*2:冊子の表紙より
*3:この冊子では、「共同生活型施設で起こった事件」として、ほかに「風の子学園事件」、「コロンブス・アカデミー事件」、「仏祥院事件」、「戸塚ヨットスクール事件」などが触れられている。
*4:【参照】:「ひきこもりの宿泊型民間支援施設はほぼ野放し?」(id:hotsumaさん)
*5:各団体や支援者が、良くも悪くも独立独歩の指針を標榜していることが多いため。
*6:それぞれの団体は、政治的にも経済的にも本当に弱い存在であり、それは無理のないことではないだろうか。