丸山眞男『日本政治思想史研究』

知人のメールに引用してあって感銘を受けた一節。(そのまま転載)

なんらかの社会的変動によって支配的立場にあった社会層が自らの生活的基盤が揺るがされたとき、はじめて敏感な頭脳に危機の意識が胚胎し、ここに「政治的なもの」が思惟の前景に現れ来る。しかるに他方社会が救い難い程度にまで混乱し腐敗するや、政治的思惟は再び姿を消すに至る。それに代わって蔓延するものは逃避であり退廃であり隠蔽である。この中間の限界状況にのみ、現実を直視する真摯な政治的思惟は存立し得る。