「立花隆 最前線報告 サイボーグ技術が人類を変える」*6

アニメ『攻殻機動隊』の「義体」の基礎技術が成立しつつある印象。(「100年後には草薙素子がいるだろう」とかなり本気で思えた。)

  • 「悲しい」という感情は、脳髄の「Cg25」と呼ばれる部位【参照】が関係しているらしい。うつ病患者に対しこの部位を刺激したところ、状態が劇的に改善した。
  • 手足の激しい震えが止まらず、支えてもらわなければ歩けないパーキンソン病の患者さん。脳髄に直接電極を差し込み、ある部位を電気的に刺激することで劇的に症状改善(顔の表情まで激変)、当たり前のように日常生活を送る。言われなければ病気に苦しんでいるように見えない。「脳深部刺激療法」という【体験談】。 同様にジストニアの症状も劇的に改善。
  • 感電により両腕を肩から失った人が、腕のある頃と同じように頭に念じるだけでそのとおりに義手(ロボットアーム)が動く。脳から腕に向かう神経を大胸筋付近に「配線」し、その電気的信号を拾ってコンピュータで解析することでリアルタイムの義手動作に転換している。
  • 大学の研究に協力している、事故で右腕を失った女性。ロボットアームの5本指を自分の手と同じように使える。指先に取り付けられた圧力センサーで、「さわられている」ことすら感知できる。▼腕をはずしても、「脳から右腕への神経」から電気信号を拾って腕まで送信できれば、遠隔地から「自分の右腕」を動かすことができる。もちろん「触覚」も伝わってくる。 【横井浩史助教授筋電義手)】
  • 手足の動きを、神経内の電気信号を読み取ることでリアルタイムに補強できる全身装着型スーツのようなシステム。体の動きに合わせ、筋力を10倍にまで増強できる。筋力の弱い肢体不自由者、災害地での瓦礫撤去などに威力を発揮しそう。 【山海嘉之教授研究室
  • 仕事中の事故により完全失明した男性が、カメラ映像の電気的情報を直接脳髄に送って映像(光)を「見る」*1
  • 生まれつきまったく耳が聞こえなかった男児。3歳時に「人工内耳」の手術を受け、6年後の今では普通に会話ができ、蝉の声を聞きながら生活している。
  • 記憶に深く関係する「海馬」と呼ばれる部分の機能を代替する「海馬チップ」の開発により、情報を溜めたり交換したりする可能性。
  • 頚椎損傷で、首から下がまったく動かない男性が、頭蓋骨から脳髄に直接埋め込んだ機器で電気信号を送り、頭で念じるだけでそのとおりにパソコンやTVを操作する【動画(クリックで再生)*2。 ▼「脳コンピューター・インターフェイス*3と呼ばれる。
  • DARPA(米国防総省国防高等研究事業局)では、このようなサイボーグ技術を使って兵士の戦闘能力を高める研究がなされている(たとえば「脳コンピューター・インターフェイス」を使えば、兵器を瞬時に操作できる)。 アメリカは、サイボーグ技術を巨大なビジネスチャンスと見ている。
  • ネズミの脳髄に電極を差し込み、「右に曲がるように指令を出す → うまく曲がれたら快感中枢を電気的に刺激して快感を与える」という状態を続けると、生きたネズミをほぼ完全に思い通りに動かせる(高所が苦手なネズミが当たり前のようにハシゴをどんどん登っていく)。 ▼同じことを兵士にやったらどうなるか。




*1:頭蓋骨に直接金属製の端子が取り付けてあって、そこに配線をつなぐことに驚いた。「首の後ろに差込口ができるのも時間の問題では…」と。

*2:Windows Media Player あるいは RealPlayer が必要

*3:《Brain Machine Interface(“neuromics”)》、あるいは《BrainGate米Cyberkinetics社)》。 ▼ネット上には、次の文章がたくさんヒットする。「DARPA researchers are also at work on the "Brain Machine Interface" ("neuromics") project, designed as a mind/machine interface, allowing mechanical devices to be controlled via thought-power.」