労働・鬱・医療

上記の記事とバランスを取るわけではないのだが(というか取るのだが)、「労働と鬱」に関して気になる記事より。

 中年男性の自殺者の多くは失業からまもなく命を絶っている。 (中略)
 反町は現在、日本とスウェーデンを比較し、自殺と失業の関係を研究している。 高所得・低失業率を誇っていた両国は、ともに90年代後半に景気が後退した。 しかし日本とは逆に、スウェーデンの自殺率は減少している。

 WHO(世界保健機関)が90年代半ばに実施した調査によると、日本の医師は精神病の81%を見落とすか誤診していた。 鬱病の症状が見られるのに、軽い精神安定剤を処方するだけのことも多いという。
 ある鬱病患者は、医師からどんな本を読んでいるかと質問されて村上春樹と答えたら、なんの説明もなく、こう言われたという。 「そんな本を読んでいるようじゃ治らない」(村上の小説『ノルウェイの森』の主人公の恋人は、精神を病んで施設に入っている)。

 「日本の開業医は、精神疾患の患者を治療していると噂になることを恐れる。 だから、鬱という言葉さえ使いたがらない。 最も強い偏見をもっているのは、医師自身かもしれない」と、中根は嘆く。 (中略)
 しかし不況が招いた過労自殺の多さは、企業も無視できないほど深刻化している。 労働問題を専門とする弁護士の川人博は、日本では自殺の3分の1が「過労がらみ」だとみている。

 「鬱病は脳の疲労から起こるもので、治療可能な病だと説明している」と、同社の田中克俊・主査産業医は言う。 「診察を受けに来る人たちは、生物学的な原因もあることを聞いて納得するようだ」 (中略)
 「一般的に中小企業の経営者は、会社の業績と直接結びつかない精神衛生の問題に、それほど関心をもっていない」と、厚生労働省の担当官は言う。 (中略)
 後になってわかったことだが、夫は自殺する前、仕事がきつすぎると子会社の社長に訴えていた。 しかし、彼の叫びは届かなかった。 社長は「ホームシックだよ」と一蹴し、酒を勧めながら「頑張れ」と励ました。 それは、追い込まれた彼が、何より聞きたくない言葉だった。





脱落したら生きていけない。

脱落しないでも生きていけない。

どうしろと。