「もっとも切実な問題」

これまでに読んだ三島由紀夫の文章で、最も心打たれたもの。
初めて読んだとき以来、20年近くずっと尾を引いている。

 もっと観念的にではあるが、少年もまた、似たような思い込みを抱いて、人生を生きつつあるのかもしれない。 ひょっとすると、僕も生きているのかもしれない。 この考えにはぞっとするようなものがあった。

花ざかりの森・憂国』 p.108。(強調部分は原文では傍点)
同書末尾の自作解説で、三島氏はこの一文を含む「詩を書く少年」、それに「海と夕焼け」「憂国」の三編を、「私にとってもっとも切実な問題を秘めたもの」と記している。