「ひきこもり支援」=「有望なビジネス・チャンス」?

 昨日のコメント欄にお返事を書いていたのだが、あまりに長くなってしまったのでこちらに書くことにする。(詳しくは昨日のコメント欄の後半部分をご覧ください)

  • こんにちは>id:kagamiさん。書き込みありがとうございます。
  • 「ひきこもりの支援プログラムや講演会等は費用は相当に高額」というご指摘ですが、たとえば宿泊型施設の場合、月額10万円前後〜20万円前後(ISBN:4939015475、上下にばらつきあり)というのは、「一人の人間を3食・ケアスタッフ付きで養う額」としては、それほど法外とは言えません。もちろんそれだけ払える家庭は富裕層だけとも言えます(思い詰めて全財産なげうつ家庭もあると思いますが)。訪問サービスも「高額」と言われても仕方のないところが多いでしょう(「あれではとても払えないのであなたにお願いしたい」との声も聞きました)。しかしそれも「稼いでいる」と言えるかどうか。講演会については2000円前後をよく聞きますが。
  • 問題は、それだけ払っても「うまく行くかどうか分からない」ということです。ひきこもりについてはまだ決定打といえるような対応策はありません。「人材再生プログラム」と言っても、その方法論やビジョンは今後の創意工夫にかかっているのです(もっと細かく言うと、「人材再生プログラム」という発想自体が当事者から拒絶されることが多いと思います)。
  • ある親御さんからは「成功報酬で」と言われたのですが、社会参加までに何年もかかることが多いので、これではこちらの生活が成り立ちません。――そもそも、「親の要望にしたがって就職させる」といったニュアンスの強い「成功報酬」という発想自体が当事者から嫌われる。さらに言えば、引きこもりには「リバウンド」ということもありますし・・・。「成功」という言葉自体がどこか無理めです。「成功」って何か?
  • ベンチャービジネスとして有望、とのことですが、ひきこもり当事者の人は実はこうした「金の巡り」に非常に敏感です。「この団体(経営者)は金儲けのためにこの活動をしているのだ」と分かった時点ですべての信用を失う可能性もあります。
  • NPOというのは「Non-Profit Organization」の略で、「非営利団体」。非営利といっても団体運営のコストはかかるので収益部門は持ってもいいのですが、「儲かるからこの活動をやる」という発想自体を根本に持ってくるのは無理があると思います。とりわけ引きこもり問題に関わるにはそうだと思います。
  • 「ひきこもりは儲かる」という発想で動き始めた団体や個人の話を聞いたことはありますが、そういうところに画期的な方法論があるとは考えにくい。上記のような宿泊施設や訪問活動も、それに馴染める人もいれば、そうでない人もいる。それこそ「金儲け団体」みたいなところに馴染む人もいるのかもしれません。僕としてはいろんな選択肢が出てくること自体を歓迎するのでとりあえず否定はしませんが、自分としては何か別の方法論を模索しているところです。
  • お金を儲けること自体を否定する気はありません。私も単に滅私奉公的な自己犠牲がいいとは思いません。ただ、私も当事者も納得できるビジョンというのはそう一筋縄では行かない、と思うのです。ひきこもり問題においては、「価値観」が最も根本から問い直されます。その際、「お金」の問題というのは決定的です。
  • 私が「支援ではなく魅惑を」といったことをこの日記で繰り返し言っているのは、このあたりの事情を指しているのです。「支援する」「再生させる」といったことを目標にするのではなく(それは「復帰」といったイメージ――社会は正しく引きこもりは負けている――を前提にしがちです)、参加して楽しい状況を作っていきたいわけです。この「はてな」も、「参加する楽しさ」を味わわせてくれるものの一つだと思いますし、僕自身はそういうつもりで楽しんでいます。繰り返しますが、「復帰する」ではなく、「参加する」といったニュアンスが大事だと思います。
  • ひきこもり問題とお金の巡り、については、今後もどんどん議論がなされるべきでしょう。今回の対話が何かの結論を出している、というわけではないと思います。僕自身も今後どうなるかはまだ未知数です。いろんな方から意見を伺いたいです。
  • 余談ながら、現在ひきこもり支援活動で行政から支援を受けている団体は、「ひきこもり」という枠組みではなく「精神障害」という枠組みでそれを受けているはずです。
  • 私のメールアドレスですが、ひとまず ueyamakzk@hotmail.com を公表しておきます。ただ、ひきこもりを巡る議論の性格上、メールで二人きりの会話にしてしまうより、少々長くなってもコメント欄や日記本文で公にしながら論じた方がいいかもしれません。