他者の欲望?

 先日あるメーリングリストで、「ひきこもりというのは、他者の欲望を忌避することだ」という発言があった。ラカンの「人間の欲望は他者の欲望である」をもとにした意見だが、かなり肯ける。その発想でいけば「他者の欲望を忌避」してしまえば自分自身に欲望がなくなってしまうのも当り前か。
 だけど、「他者の欲望」だけかな? 僕の外出恐怖には、たとえば「細菌(ウイルス)恐怖」がある。本屋さんは好きだけど、そこに行くまでに電車という細菌の巣に乗らなければならず、本屋さん自体も細菌だらけだ。風邪うつされたり病気したりすることに凄い恐怖があって・・・。ホテルに泊まっても、水虫うつされるのが嫌だからと床は素足では歩けなかったりする。・・・一般に「外界」とか「自分ではないもの」に対する恐怖があって、その「自分を傷つける自分ではないもの」の最たるものとして「他者」とか「他者の欲望」ってものがあるんだと思う。
 「人間の欲望は他者の欲望」というけど、じゃあ個人によって好みの対象が違ってしまうのはどう説明するんだろう。たとえば僕はまさに「他者たちの欲望」に導かれて「ファウスト」という雑誌を購入したわけだが、あれだけ人々に求められているという作家たちの作品はぜんぜん駄目だった。ぼくの資質というものがあるわけで・・・。