震災の記事を見ていたら、いろいろ思い出した。
読んでくださってる皆さんにとって意味があるかどうかわからないけど…。
どうして、こういうものを書きつけたくなるんだろう。
震災直後の、山田和尚氏の体験*10
ペシャンコに潰れた家の下から、うめき声が聞こえる。 近寄ってみると、その声から2mほど離れたところから、小学校低学年くらいらしい女の子の元気な声。 「大丈夫かぁ!」と呼びかけると、
「こっちはだいじょうぶや、そやからそっちを早く助けてやって」
瀕死のうめき声は母親らしいが、「助からない」と判断し、女の子の救出に全力を傾ける。 しかし彼女は
「なんでこっちやの。 こっちは元気やからそっち(お母さん)が先や。 苦しんでるやんか」
「だいじょうぶや。 お母さんは別の人がやっとる。 そやからおっちゃんがこっちの係や」
血まみれになりながら何時間も頑張ったが、素手ではどうしようもない。
――つぶれた家の後ろから白い煙。・・・・助からない。
二、三分ほど沈黙していたでしょうか、意を決して、私は壁の向こうの彼女にこういいました。
「何かわかるか」
急に静かになった私に、彼女は何か異変が起こった気配を感じ取っていたのでしょう、しばらく黙りこんだ後、今までと変わらぬ弾んだ調子でこう答えました。
「煙やろ」
この明るい声に、私は今まで味わったことのないほどの強烈な衝撃を受けました。*1
もう駄目なのはお互いわかっているが、彼女に「よーし、頑張るな、もう一回!」と声をかけ、再度瓦礫と格闘する。 もちろんどうしようもない。
間もなく「ボッ」という音とともに家の裏手から炎が上がり、火はみるみる大きくなってゆく。
たまらなくなり、なぜか彼女に向けて「元気出せー、元気出せーっ!」と叫び続けた。
目の前で炎に巻かれ、彼女は亡くなった。
*1:同上書、p.28-9
震災当時聞いたエピソード*11
全壊家屋に閉じ込められた男性に気付いた近所の人たちが、懸命に彼を助け出そうとしたが、間もなく火が回ってきた。 そのとき、中の男性がつぶやいた。
「もう逃げてくれ。 ・・・・ありがとう」
【付記: この話を聞いたとき、耐えられずにずいぶん泣いた。】